ビジネスシーンでイノベーションを起こしている経営者たちと、
クリエイティブの世界でイノベーションを起こしてきた宮藤官九郎との異業種対談企画。

今回のゲスト

上原基揮
おおきベリー株式会社 代表取締役

上原基揮UEHARA MOTOKI

大学卒業後、12年間大手ガラスメーカーに勤務。
在職中に経営を学ぶため、慶応義塾大学経済学部に入学し、2015年に学位を取得。
2017年 おおきベリー株式会社を立ち上げ、代表取締役に就任
2018年 いちご(あまおう)の栽培を開始
2020年 28.8アール→52.8アールに規模拡大

2021年9月10日(金)

ゲスト上原基揮

TBSラジオで放送中の「宮藤さんに言ってもしょうがないんですけど」。パーソナリティは、宮藤官九郎さん。

日本の経済を動かす経営者や団体の代表の方に、哲学や考えを聞きながら、知られざる業界の実情に迫っていく「Innovative Lounge」。

お迎えしたのは、おおきベリー株式会社 代表取締役 上原基揮さんです。

宮藤:おおきベリーさんは、福岡の大木町で、いちごの「あまおう」を主に栽培されているいちご農家さんだそうですが、農業される前は企業に勤めていらしたんですか?

上原:そうですね。大手のガラスメーカーに勤めていまして。

宮藤:ガラス?農業とは全く関係ないですね。

上原:全く関係ないですね(笑)そこの製造業で、ガラスを成形するための金型を設計したり、加工したり、その生産ラインを管理したりですね。そういった工場でするような仕事をやっていました。

宮藤:どれぐらいの期間やられていたんですか?

上原:12年ぐらいですかね。

宮藤:結構がっつり働いていたんですね。それがまたなぜ農業に?

上原:もともと働きながらも「起業したい」という思いがあって、漠然と「起業するなら農業で」と。それで、農業をするなら馴染みのある福岡でやりたいなと思いまして。福岡だったらいちごで「あまおう」というブランドがあって。

宮藤:有名ですよね。おいしいですよね。

上原:はい。いちごだったら加工して販売してとか、6次産業化もビジネスとして見込めるかなと思って、福岡でいちごを始めることにしました。

宮藤:いちごをやられてどれぐらい経つんですか?

上原:3シーズン作りました。3年作って、今4年目ですね。大木町というところが、新規就農者の支援をすごくしてくれている所で。研修施設があって、最初の1年間はそこの研修施設でいちごの作り方を学んで。

宮藤:すごいいい所ですね。

上原:それで1年研修して、その後に新規就農したという形です。

宮藤:大木町は、以前からいちごの栽培が盛んな地域だったんですか?

上原:そうですね。大木町は、いちごやアスパラガス、きのこなんかの産地ではあるんですけど、その中でもいちごは盛んで。今でも私みたいに新規就農する人が毎年2~3人ずつぐらい増えているような所です。最近は別の仕事をしていて農業に夢ややりがいを求めてくる人が少しずつ増えてはきていますね。

宮藤:そのおおきベリーさんで栽培されたいちごは、今どういう形で市場に出回っているんですか?

上原:ほとんどJAに出荷をしていて。トラックが大阪を経由して東京に行っていまして、ほとんど東京のほうに出荷されています。

宮藤:じゃあ、我々が「あまおうだ」って思って食べたいちごが?

上原:入ってるかもしれないです。

宮藤:そうですか。会社のHPには、「自然環境農法」と提唱する栽培方法を行っているそうですが、これは具体的にどういうことなんでしょうか?

上原:科学的な農薬を減らす努力をしていくのと、あと微生物を積極的に活用していこうと。微生物って菌なんですけど、善玉菌・悪玉菌って言われるように、いい菌・悪い菌ってあって。いい菌を土に豊富に含ませてやることで苗自体が病気に強い苗になって、おいしいいちごがたくさん採れるんです。あと、農薬を減らすアプローチに関しては、いちごの害虫でハダニとかアザミウマっていうのがいるんですけど、そういったハダニを食べるダニもいて。それがボトルで売られていて“天敵”って呼んでるんですけど、そういう技術というか。

宮藤:なるほど。農薬を使わなくても、天敵を投じることによって害虫を駆除できるわけですね。すごい技術ですね。きっと、もっと簡単にするために農薬を投じたけど、結局それを上回る、自然に戻す技術が開発されたってことですよね。

上原:そういうふうに捉えてもらっていいと思います。

宮藤:そんな上原さんが感じている、業界の問題点を教えていただけますでしょうか?

上原:宮藤さんに言ってもしょうがないんですけど、とにかく、後継者不足なんです。

宮藤:なるほど。やはり、若い人の成り手が少ない?

上原:ですね。先程、新規就農者が増えているとは申し上げたんですけど、やはり高齢化が進んでいて辞める人のほうが多いんですね。で、普通にパートさん、アルバイトさんを雇おうとしても、「農業をしたい」という人を集めるのが難しくて。そういったところで、働き手が農業という業種全体で不足している状況は常にあります。

宮藤:いちごの栽培って、1年の中でめちゃくちゃ忙しい時とそうじゃない時ってあるんですか?

上原:あります。今の時期は苗を育てているだけなので、そんなに手がかからなくて人を雇える状況じゃないんですね。あまおうで言うと11月の半ばぐらいから収穫が始まって、そこから半年間が収穫期になります。5月ぐらいまでですね。

宮藤:結構長いですね。半年間。

上原:そうですね。その間は人手が必要なので、パートさんとかアルバイトさんを雇わないといけないんですけど。

宮藤:でも、半年しか働けないんじゃ…。

上原:そうなんです。半年働いてもらって、あとの半年は仕事が少ないと、人もそこで離れていってしまう。必ずまた半年後に戻ってきてくれるわけではないので、そういったところが人手不足にも繋がるところですね。

宮藤:事前アンケートにも書いてありますが、「一人当たりの生産性を向上させることで、作業負荷の軽減をはかっている」と。これは、人手が少ないっていうことをカバーしているということですか?

上原:そういう意味もありつつ、効率をよくすることでもあって。農業の作業ってやっぱりきついんですけど、作業を改善することで少しでも楽にする。そういう目的もあります。

宮藤:肉体的に?

上原:そうですね。重たいものを運んだり、同じ作業を何回もしたり。以前、製造業の仕事で生産ラインの改善もやっていたので、そういったことを農業にも取り入れて様々な問題を改善できないかなと思っています。

宮藤:役に立っているってことですね。全然違う業界だけど。

上原:そうですね。「モノを作る」というところは共通ですので。人が働く環境を改善していくところは一緒だと思っています。

宮藤:他にも、販売に関して悩みがあるということですが?

上原:ここはデリケートな話にはなってしまうんですが、弊社がJAに出荷をしていることもあるんですが、それ以外で「産直」とか直接販売をいろいろしていきたいとは思いつつも、やっぱり結構気を遣います。文化とか慣習で「全部JAに出さなきゃいけない」とか、昔ながらの流れがあったり。無意識的に自由な売買が制限されているな、と個人的には思っていて。

宮藤:そうしなきゃいけないわけじゃないんですよね?

上原:そうですね。逆にJAって巨大な市場を持っているので、「全部うちに出しなさい」となると独占禁止法でダメなはず。なんですけど、暗にそういう流れがあって。例えば、うちが産地直送でいろんな販売をしたいってなると、よく思わない人たちもいて。地域の人とともうまくやっていかなければいけないので。

宮藤:なるほど。閉鎖的な部分もあるんですね。

上原:はい。どんどん若い人に仕事してもらって、日本の産業として成長させていこうっていう観点からするとちょっとどうなのかな…とは思っていますね。

宮藤:上原さんみたいな若い人が変えていかないといけないってことですよね。

上原:そうですね。自分のやりたいことをやりながら、内側からそういったところを変えていければいいなと思っています。

宮藤:お話、ありがとうございます。

アーカイブ