ビジネスシーンでイノベーションを起こしている経営者たちと、
クリエイティブの世界でイノベーションを起こしてきた宮藤官九郎との異業種対談企画。

今回のゲスト

保科陽子
ピアノ経営塾株式会社 代表取締役

保科陽子HOSHINA YOKO

3歳からピアノを習い、国立音楽大学教育音楽学科幼児教育専攻。
河合楽器音楽教室に勤務後、教室勤務で生徒数No2講師となり、その後独立。
ピティナコンクール大人の部優秀賞、連弾の部優秀賞受賞。
指導者への取り組みを始め、年間4000名のピアノ講師を指導する他、年間50回以上のコーチングセミナーを実施し、他にも合計250回の講義を全国で行い、ピアノ講師310名に2800時間セッションをこなす。
並行して、生涯学習開発財団認定プロフェッショナルコーチの資格を取得。
2014年、経営や保護者とのコミュニケーションの取り方まで指導する「ピアノ経営塾」を始動し、「人生はデザインできる!」という理念のもと、年収100万円でもすごいと言われる業界で、年収500万円のピアノ講師を多数輩出し、現在10期、200名以上の卒業生が活躍している。ピアノ教育は発達障害を抱える子供や障がい者教育にも効果を上げているため、その普及活動にも力を注ぎ全国を駆け回っている。

2021年1月1日(金)

ゲスト保科陽子

TBSラジオで放送中の「宮藤さんに言ってもしょうがないんですけど」。パーソナリティは、宮藤官九郎さん。

日本の経済を動かす経営者や団体の代表の方に、哲学や考えを聞きながら、知られざる業界の実情に迫っていく「Innovative Lounge」。

お迎えしたのは、ピアノ経営塾株式会社 代表取締役 保科陽子さんです。

宮藤:では、いきなりですが、保科さんが感じる、ピアノを教える業界の問題点から教えてください。

保科:宮藤さんに言ってもしょうがないんですけど、ピアノの先生は、全く経営を学ばないままピアノ教室を運営していることが多いんですよ。

宮藤:なるほど。保科さんは、ピアノの先生に経営の仕方を教えるお仕事をしているんですね。

保科:はい、そうです。経営を教えたり、集客や、保護者とのコミュニケーションの仕方を教えています。ピアノの先生は、音大を出てる方が多いんですけども、指導法とか演奏法とか、そういうのはしっかり学んできているのですが、経営法を学んではいない…。音大を卒業をされた方は、その後は一般企業に就職したり、演奏家になったり、音楽教室に講師として雇われたりして。その後、割とピアノの先生を自宅で開く方が多いんですよ。

宮藤:へえ!

保科:この時に、経営が必要になってくるんですよね。

宮藤:そうですね。個人ですもんね。例えば、宣伝はどうやってやるとか、授業料はいくら取るのとか?

保科:そうです。

宮藤:全部、相談に乗ってるんですか?

保科:それをみなさん知らないで独学でされているので、おかしなことをしちゃうんですよね。

宮藤:へえ。

保科:月謝が安すぎたり、ネットの集客とか、今はネットが当たり前の時代だと思うんですけど、そういうのがわからない。口コミだけに頼っていて、立派な音大を出て海外へ留学までして帰ってきたのに、生徒が一人二人の閑古鳥が鳴いちゃってるとか…。もったいないじゃないですか。

宮藤:その人は、ピアノの先生だけでやっていきたいと思っているわけですもんね。

保科:そうなんですよ。ピアノが大好き。弾くのも大好き。教えるのも大好き。

宮藤:でも、それ以外ができないの?

保科:そうです。

宮藤:そういう人たちに、どういう指導をされているんですか?

保科:口コミだけでちゃんと生徒さんがついてる先生は必要ないのかもしれないですけど、もう今はこういう時代なので。ホームページを作ったり、ブログ書いてもらったり、あとはSNSですよね。YouTube、Instagram、ありとあらゆるものを教えています。

宮藤:ええ!

保科:本当に。大変ですけど…(笑)

宮藤:ピアノの先生に、ピアノ以外のことを教えているっていうことですね。

保科:そうですよ。ブーブー言われながら。(笑)「なんでこんなことするんだ!」とは言われないかもしれないけど、思っているとは思うんですけど…。

宮藤:ピアノの先生って、あまり触れてこなかったんですかね?そういう新しいものに。

保科:そうですね。たぶん、「ピアノ以外のことはしちゃいけない」と育てられてる。「そんな時間あるなら、ピアノ弾きなさい」とか。私も言われましたもん。「勉強しなくていい」とか、「包丁持たなくていい」とか。

宮藤:ええ!そうかそうか…。

保科:「それをやってる時間があったら、ピアノ弾きなさい」みたいな、ちょっと不思議な。昭和の時代はそういうのが多かったですね。今はないと思うんですけど。

宮藤:じゃあ、パソコンなんかできない人いっぱいいるんですか?

保科:もう!もう!もう、大変ですよ!持ってないとかね。

宮藤:持ってない…?

保科:持ってない。家族と共有だとか、「パソコンのスイッチどこですか?」みたいな(苦笑)

宮藤:そういう人に、生徒募集の広告を出したりとか、教えてるんだ。

保科:はい。ホームページを作ったりとか。資金があればまるっとどなたかにお願いして。やっぱり高いので…。自力でできるようにしておこう、と。

宮藤:習う方も、ちょっとしたピアノの技術の違いは正直わからないですもんね。

保科:結局、私たちが一番初めに教える生徒さんは、3歳とか4歳なんですよ。別に芸大出てなくても…。

宮藤:ですよね。

保科:どちらかというと幼児教育がちゃんとできて、コミュニケーションがちゃんと取れて、生徒さんのモチベーションが上げられるような、そんな方であれば。よくピアノのランクで「ソナチネ」とか「ソナタ」とかいうランクがあるんですけど、「ソナチネ弾ければ十分です!」って。で、その子たちが成長してショパンとかバーッと弾くようになったら、そういうのが得意な専門の先生がいらっしゃるから、生徒さんをその先生にお預けしてもいいんじゃない?って。結構業界では、生徒さんが音大とか目指すと、音大に特化した先生のところに預けるっていうのがあるから。

宮藤:まだそこまでのレベルにいってない人は、別にそういった人じゃなくてもいいですもんね。

保科:基本的にピアノが大好きで、一生懸命小さい頃から習って、音大にいってなくてもある程度弾けて、教える熱意があれば、私は全員ピアノの先生をやってもいいんじゃないかって思っちゃうんです。そうなると、余計に個人単位で生徒さんを集める技術が必要です。

宮藤:そうか。競争ですもんね、そこはそこで。

保科:すごいですよ。たくさんいますから、ピアノの先生。

宮藤:ピアノの先生も多いですもんね。

保科:多いです。だから熱意があって、指導力があって、本当にピアノが大好きな先生ほど、頑張って集客も覚えてほしいと思います。もったいないもの、閑古鳥鳴いたら…。

宮藤:そうですね。人気があるピアノの先生って、一言では言えないかもしれないですけど、どういうタイプの人が?

保科:やっぱりね、お人柄ですよ。キャラクター。「その先生に会いに教室に行きたい!」っていう。

宮藤:そうですよね。子どもがまずそう感じてくれないと。

保科:「一緒にいて楽しい」とか。もちろん、レッスン終わったあとに「上手になってる!」とか、「今日、先生のところに行って上手になった!」とか、その効果も大事だけど。やっぱり、人を惹きつける魅力が大事だと思うんですよね。

宮藤:そうですね。うまく弾けることも大事だけど。

保科:やっぱりお人柄。あとは、うちの業界では今すごく大事にしているキーワードがあって、「生徒さんの第二の母になろう」と。

宮藤:ピアノの先生が、第二の母に。

保科:すごく特殊だと思うんですけど、私たちってヘタすると、3歳のお子さんが通ってくれたら、10年ぐらいお付き合いできるんですよ。中2まできたら10年間じゃないですか。

宮藤:10年間ですね。もっといくかもわからないですよね。

保科:こんなに一人の先生に見てもらう…そんな先生いなくないですか?学校だって、幼稚園だって、くるくる変わって長くても2年とか。だから、「いやー、この子3歳の時はおもらししたよね」とか、そんなお付き合いから「いやー、この子も彼氏の話をするようになったか」と、そこまでずっと見守れる。

宮藤:そうか、お母さんですね。

保科:生徒にこれ言われたら涙が出るくらい嬉しい言葉があるんですだけど、「お父さんとお母さんには言えないけど、先生には言えるのよ」とか言われると「ダーーー(涙)」みたいな。

宮藤:ピアノを通じて、親には言えないことも。

保科:思春期になると、話をしにだけレッスンに来ることも。ピアノを弾かないで。さすがに「最後、ちょっとピアノ弾いていかない?」って言うけど(笑)

宮藤:(笑)

保科:いじめがあったとか、不登校だったとか、先輩にこんなこと言われたとか。特に思春期はそれが顕著にあって、結構多くの先生がそういう話をしますね。「思春期突入した生徒さんが、話だけしに来る」って。

宮藤:それで気が紛れるんだったらいいですよね。

保科:「第二の母」ですから。「なんでも言いなさい!」みたいな。そのうち保健室登校的な、そういう部分にピアノ教室がなったらいいなと思って。

宮藤:そうですよね。ご自宅でやってるというのは、そういうメリットはありますよね。

保科:たぶん、密閉された空間っていうのがいいんでしょうね。防音室があったりとか、ドアで遮断されているので。

宮藤:あー! そうかそうか。誰も来ないっていう。

保科:そうそう。生徒の様子は来たらわかりますので。沈んでいれば、「なんかあった?」って聞くと「よくぞ聞いてくれましたー(涙)」「こんなことがあって…」とか。そういう話を聞くと、やっぱり私たちの役割って音楽だけじゃないなって。人育てっていうか。

宮藤:人柄ですね、本当に。

保科:話しやすいとかね、親身になってもらってるとか、愛してもらってるとか。居場所になれば。

宮藤:そういう先生を育成しつつ、経営も教えてらっしゃるっていうことですね。

保科:そうですね。たぶん今、学校の先生はそこまでフォローできないと思うんですよ。子どものプライバシーのことって。

宮藤:そうですね。一人ですもんね。

保科:そういうコース作ってもいいかな。話だけ聞くっていう(笑)

宮藤:ピアノ弾かないコース(笑)

保科:子どもたちのメンタルのケアとか。

宮藤:なるほど。今は、コロナでピアノ教室の経営状況はどんな感じなんですか?

保科:3月のコロナの頃も、全国から悲鳴があがってきて。

宮藤:そうですよね。

保科:結局、リアルで生徒さんに来てもらえない。っていうことで、「オンラインレッスンをしましょうよ」と。それがまた大変で。パソコンが全然できない先生にそれを教える動画を作って、「これをとにかく見て下さい」と。そこからですね、毎日YouTubeライブしたり…それは今もやっています。

宮藤:そうなんですか。

保科:私のYouTubeチャンネルはピアノの先生たちが登録しているんですが、先生たちに「どういうことで困っているの?」とか、「今こうだよ」とか、「オンラインレッスンはやってる?」とか、「今、こういうアプリがいいよ!」とか。もう、ずーっと。

宮藤:それで、オンラインでレッスンの仕方を教えて?

保科:そうです。

宮藤:で、その先生たちが、オンラインでピアノを教えるわけですよね?大変だわ。

保科:「なんか音が途切れた」とか、「繋がらない!相手がガラケーなんだけど、どうしたらいいですか?」みたいな。

宮藤:相手ガラケーじゃだめですよ(笑)

宮藤:コロナ禍でピアノを辞めちゃう子もいたんですか?

保科:結局、オンラインレッスンができない先生は、「休室」したんですよ。国がダメと言ってるから、来させられないじゃないですか。結局、休室することで、ピアノ離れが進んじゃったんですよ。でもそれがわかってたから、「絶対、休室にするな」と。

宮藤:「やり続けなさい」と。

保科:ピアノ弾いてる子が先生に見てもらえなかったら、路頭に迷ってしまいます。

宮藤:そうですね。

保科:休室したら気持ちが途絶えて、「もうピアノはいいやー!モチベーション下がったー!」っていうことで、休室から退会に繋がったケースもよく聞きましたので。また今第3波がきてますけど、今回も絶対休室せずに、オンラインで乗り切れ!と。色々と音の問題はあるけど、みんな頑張れ!って励ましていますよ。

宮藤:それこそオンラインで繋がって、別にピアノだけじゃなくても世間話するだけでもいいですしね。

保科:「学校どう?」とか言って。かわいそうだったのは、小学校の新1年生とか、まだ学校に一度も行ってなくて課題だけ飛んできて…。大学生も新1年生とかは「まだ1回も学校に行ってないです」とか。そういう時に「こういうこと勉強しておいた方がいいよ」とか、勉強見てた人もいましたよ。

宮藤:ピアノじゃなくて。

保科:改めて、ピアノの先生も色んな役割があるなと思いました。もっとピアノの先生が大活躍できる時代がきたらいいですね。

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