ビジネスシーンでイノベーションを起こしている経営者たちと、
クリエイティブの世界でイノベーションを起こしてきた宮藤官九郎との異業種対談企画。

今回のゲスト

井上光
(株)Musashi Education 代表取締役

井上光INOUE KOU

2009年 早稲田大学教育学部卒業 / 早稲田大学社会科学研究科(修士課程)入学
2011年 早稲田大学社会科学研究科(博士課程)入学
2015年 満期退学/ (株)Musashi Education 設立

2021年6月18日(金)

ゲスト井上光

TBSラジオで放送中の「宮藤さんに言ってもしょうがないんですけど」。パーソナリティは、宮藤官九郎さん。

日本の経済を動かす経営者や団体の代表の方に、哲学や考えを聞きながら、知られざる業界の実情に迫っていく「Innovative Lounge」。

お迎えしたのは、(株)Musashi Education 代表取締役 井上光さんです。

宮藤:Musashi Educationさんは、中・高・大学それぞれの受験指導に特化した進学塾「Musashi」を運営されていると。

井上:はい。そうです。

宮藤:私、今高1の娘がいまして。全然受験にリアリティを感じていないんですよ。「受験する気あるのかな?」って思うぐらい、今もう目の前のことしか何もしていなくて。Musashiさんは受験の指導に特化しているんですね。

井上:そうですね。学校の補習みたいなことばかりだとこっちも楽は楽なんですけども、やっぱり「受験」っていう厳しいハードルがあると「本気度」がお互いに違ってくるかなと。

宮藤:ああ。

井上:あとは、お金が絡んでくる以上、やっぱり子供にも本気になってほしい。「このぐらいの学費がかかってるんだぞ」と。

宮藤:「これだけお金かかってるんだから、本気で頑張れよ」と。「そうするとこういう大学行けるんだぞ」とか?

井上:そうですね。親御さんにもお願いはしているんですけどね。お金の話は正直、子どもにはしたくないかもしれないですけど、できれば塾代のことは「これぐらいかかってて」っていうのはしてほしい。言うべきだと思いますね。

宮藤:なるほど。他にはどんな特徴を持ったスクールなんですか?

井上:小さい塾ですし、ある程度の考えを共有したメンバーでやっていますので、先生それぞれが「こういうことを教えていけば」「こういうことをやっていけば大丈夫だろう」っていう、自分たちが正しいと思ったことをやっています。

宮藤:先生それぞれが。

井上:はい。どこか予備校とか大手の塾さんとかだと、「こういうことをやりましょう」って上からくるわけですね。

宮藤:先生というよりは、もっと上から?

井上:そうです。そこで与えられた枠の中で教えたり、運営をしないといけないんですけども。うちの場合はそういうのを取っ払って、ほぼ「目の前にいる子たちはどういう状態だ」「じゃ、これでいこう。あれでいこう」っていうのができる。そこに対する責任は自分たちで負うことになるんですけども。そこに、みんなやりがいを持ってやってくれているのかなと思いますね。

宮藤:そんな井上さんが、業界の「ここを変えたい!」と思う点を教えていただけますでしょうか。

井上:宮藤さんに言ってもしょうがないんですけど、利益を重視しすぎる塾。そういう業界に今なってしまっていて、あまり生徒に向き合えてないっていうのがあるんです。

宮藤:学習塾が利益至上主義になっていると。

井上:そうですね。

宮藤:それは、こちらとしては、どうやって見極めたらいいんですか?

井上:いろんなオプション講座を、塾・予備校っていうのは用意しているんですね。「あれも取ったほうがいいぞ」とか「これも取ったほうがいいぞ」とか、危機感を煽るような言い方をしてくるんですね。

宮藤:はい。

井上:でも、実際に考えてほしいんですけど、持っている時間って有限なんですよね。例えば、夏休みに1日14時間勉強できる子がいたとしましょう。そうすると、日曜日を抜いたら540時間なんですね。

宮藤:そうですね。ああ。

井上:540時間で塾行って、予備校行って、授業受けている時間。そこに対する予習復習で3倍の時間が必要なので。そうすると、1日14時間勉強できる子でも夏休みに自分で勉強できる時間ってだいたい300時間ぐらいに減っちゃうんですよね。これ、14時間勉強できる子ですよ。だいたいの子ができないですよね。

宮藤:まず、14時間できないですね。

井上:そうすると、講座の取りっぱなし。これほど無駄なことはないですね。行って、できた気になってしまう。

宮藤:ああ。なるほど。受けてるだけみたいな状態。

井上:いかに塾を見極めるかが大事になってくると思うんですけど、ポイントは、「自分の勉強時間をどうやったら確保できるのか」という提案をしてくれる先生がいるところがいいですね。

宮藤:なるほどね。親はそれできないんですよね。もう自分たちの時とは変わりすぎていて。

井上:本当にそうだと思います。

宮藤:親としては、教えたいんだけど、時代が違いすぎて教えられないんですよね。それをちゃんと「あなた、こういうふうに時間を使ったらいいよ」とか、勉強の仕方を教えてくれると。

井上:そうですね。時間の配分の仕方から、「それじゃ、この講座いらないから省いていいよ」とか、そういう話に絶対なりますので。それが、ちゃんと生徒を見ているってことなのかなと。

宮藤:確かに、いっぱい講座取ってもらったほうが塾の利益にはなりますもんね。

井上:そうですね。でも、そうすると自分の勉強ができなくなって、結局希望のところにも受からない。

宮藤:そうですよね。井上さんが思う、「優れた塾講師」ってどんな先生だと思いますか?

井上:合格・不合格もありますが、厳しい受験を通じて、その子がこの先、生きていく上で「あの時この話を聞いて、それがずっと残っている」っていう話を伝えられる人。

宮藤:生徒の印象に残ることが言える人ですかね。

井上:そうですね。「それで何か変われた」とか、「今日勉強だりぃな」って思っても、その先生のことが頭の中をちらついて「ちょっとやるか」みたいな。

宮藤:そういうふうに何かを与えられる先生ってことですよね。

井上:はい。それがいい先生かなと。

宮藤:逆に、「受験を勝ち抜ける生徒」って何か共通点はありますか?

井上:自分の意思が明確な子ですね。「何がしたい」「これがしたい」「あれがしたい」っていう意思が明確に持てている子は強いかなと思いますね。

宮藤:へえ。進路が明確に決まってたり、「この学校に行きたい」とか?

井上:そういう意思よりは、「今、私はこれがやりたい」「とにかく今はこれがやりたい」で、「それはなぜだ」っていう理由がちゃんと言える子ですね。ただ単になんとなく「ちょっと疲れたからスマホ」じゃなくて、「今はこの記事が見たい」「今は友達とこういうことが連絡したい。なぜなら…」っていうことが明確に言える子が強いかなと。

宮藤:そうなんだ。そういう子が「今は勉強したい」と思えるようになればいいわけですね。

井上:仰る通りですね。

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