ビジネスシーンでイノベーションを起こしている経営者たちと、
クリエイティブの世界でイノベーションを起こしてきた宮藤官九郎との異業種対談企画。

今回のゲスト

伊藤秀生ITO SYUSEI
1989年 九州工業大学卒業
同年 アポロ電子工業株式会社入社
1991年 福岡ナショナル電工株式会社入社
2000年 アイ・ティ・オ・エコ設立
2017年 株式会社アイ・ティ・オ・エコ設立
ゲスト伊藤秀生
TBSラジオで放送中の「宮藤さんに言ってもしょうがないんですけど」。パーソナリティは、宮藤官九郎さん。
日本の経済を動かす経営者や団体の代表の方に、哲学や考えを聞きながら、知られざる業界の実情に迫っていく「Innovative Lounge」。
お迎えしたのは、株式会社アイ・ティ・オ・エコ 代表取締役社長 伊藤秀生さんです。

宮藤:会社名の「アイ・ティ・オ・エコ」というのは、要するに伊藤さんだからITO?
伊藤:そうなんですよ。アルファベットで書いてITO。日本語で書いたら「伊藤環境」ですね(笑)
宮藤:「伊藤環境」ですね。エコは環境なので。なるほど。環境に関わる仕事をされているっていうことですよね。詳しく事業内容を教えていただいてよろしいですか?
伊藤:厨房汚水の有機油分を分解して、あとは消臭ですね。そういうようなことができるバクテリアを製造しています。
宮藤:ちょっと待ってください。厨房の汚れた水をきれいにするバクテリアを開発している?科学者じゃないですか、それ。
伊藤:いやいやいや。なんちゃってですけど(笑)
宮藤:それが「オリジナルバイオ製造」っていう事業になるわけですね。どれぐらいきれいになるものなんですか?汚水って要するに油とかですよね?
伊藤:そうです。厨房から流れてくる汚水ですね。それを一か所に溜める場所があるんですよ。建築基準法で決まっているんですけど。そこに油と汚泥を溜めて、抽水だけ流しなさいっていう形なんですけど。そこの油が時間が経つにつれて腐敗して臭いがするし、配管の詰まりとかに影響してくるわけです。そこに適したバクテリアを毎日入れて、その日に流れた1日の油をその日のうちに分解させる。そして臭いを消すと。
宮藤:それを作って、販売して、ちゃんと使われているかとか、詰まっていないかをチェックしている。そういう仕事ですか。
伊藤:はい。月に1回必ず全部の現場を回って、バイオの補充と、汚れていれば清掃をする。これを20年ほど続けています。
宮藤:本当にきれいになるんですか?僕のイメージだと、本当にドロッドロの油がサラッサラの水になるイメージなんですけども。
伊藤:分解もいろいろで、専門的に言ったら40分解ぐらい。一次分解からあるんですけど。バクテリアのエサになる油をバクテリアが食べちゃうんですね。だから、完璧に環境のバランスがとれた時には水に変わっちゃいます。透明な水になります。
宮藤:ええ!
伊藤:底まで透けて見えます。
宮藤:すごいな、バクテリアって。生き物ですね、もう。
伊藤:そうです。顕微鏡で3000倍ぐらいじゃないと見えないかもしれないですね。
宮藤:そんな伊藤さんが今、活動している原点となる思いを教えてください。
伊藤:宮藤さんに言ってもしょうがないんですけど、昔のような自然環境をなんとか取り戻したいんです。
宮藤:伊藤さんが言う昔っていうと、どれぐらい昔ですか?
伊藤:私が子どもの頃ですので、もう40年とか、それぐらいになると思うんですけど。田舎者ですからいつも川で泳いで遊んだりしていたんですよ。目を開けていろんな魚を捕まえたり。でも、今の子どもたちを見ていたらそれができていないですね。
宮藤:できないですよね。
伊藤:川のそばの用水路から流れてくる水を見ていたら、もう洗剤の泡だらけ。それを見た時に「ああ、昔に戻してあげたいな」っていうのが、まず最初のはじまりですね。
宮藤:それが、伊藤さんがこのお仕事をされるきっかけになったってことですか。
伊藤:はい。「もうこれからは、人のために何かなることを」って、その時そう思ったんですよ。
宮藤:それはいくつぐらいの時ですか?
伊藤:35歳ですね。
宮藤:「あっ、これはヤバい。このままじゃ環境が」と。
伊藤:はい。汚れの原点はどこかから出るんですけど、その出てきた最初の時点できれいにしていこうって努力したら、お金もかからないし、楽にきれいな状態に戻せると思います。
宮藤:川に流してからきれいにするのは難しいですもんね。
伊藤:これはすごい莫大な費用が。
宮藤:川に流す前にきれいな状態にしてということですね。伊藤さんは、もともとそういうバイオの専門でやられていたんですか?
伊藤:いえいえ。全然畑違いなんですよ。
宮藤:何をされていたんですか?
伊藤:高校時代は建築科。大学は金属系の勉強をして。それで入社したのが、半導体の会社なんです。
宮藤:でも研究するのは好きなんですね。
伊藤:そうですね。考え事するのは好きかもしれないです。

宮藤:その清掃事業も、昔は環境によくないやり方が多かったってことですか?
伊藤:そうです。私が見る限り今でもそうなんですけど、だいたい施設関係で私がバイオを入れているところは、以前はバキュームカーで抜き取って持って帰っていたんですよ。
宮藤:持って帰って、それはどうしてたんですか?
伊藤:どこに行っているの?って話ですよね。最終処理場とかいろんなところに行って、大きなお金かけてきれいにしているんですけど。やっぱり手間暇かかるし、コストがすごいんですよ。年間にすごいお金がかかっています。
宮藤:そのバクテリアを利用しているところと、利用していないところが今あるわけですよね。利用していない人は、汚いまま流している。
伊藤:日本人の典型です。「自分のところから出た後はもう知らない」っていう。ヨーロッパとかその辺のところがですね、やっぱり設計の段階でしっかりされているらしいんですよ。
宮藤:事前アンケートに「もっと自分たちで手軽に作業できるマニュアルが作れたら、低予算で幅広く拡張できるのではと考えています」とありますが、これできちゃったら伊藤さんのところが儲からなくなるんじゃないですか?
伊藤:あまり儲からないと思いますね…。
宮藤:あんまり人に教えちゃうとみんなやっちゃいますよ。
伊藤:それでも日本全国にそれが広まったほうが、日本という国がきれいになるんじゃないかと思うんですね。
宮藤:もう、鏡ですね。
伊藤:いやいやいや。そのほうが結果的にみなさん喜ぶんじゃないかなと思うんですよ。汚い水を流すから変な菌とかも溢れてくるし。この先もそういうことが起きると思うんですよ。自然が破壊されているから、こういうことが起きているので。
宮藤:そうですね。「この業界自体が、あまり長く続かない業界だ」ということも伺いましたが、そうなんですか?
伊藤:そうですね。同業者さんがだいたい3年ぐらいでみなさんいなくなっているんですよ。
宮藤:同業者が?何でですか?
伊藤:「キツい」とか「汚い」とかね。いろいろあるじゃないですか。清掃もしてあげるんでね。実際に私どもがお客さんのところで現場をいただいたら、言い方アレなんですけど、そこに自分のところの金魚じゃないですけど、ペットを飼うようなものなので。
宮藤:ああ、そうか。
伊藤:次の月にそこのお客さんのところに行くまでの間、きれいな環境を作ってあげたいじゃないですか。そうしないとペットが苦しむから。
宮藤:だから掃除もしなきゃいけないし、点検もしなきゃいけない。
伊藤:そういうことを考えた時に、なかなか若い子が育たないですね。他の会社の方たちも、みんな3年ぐらいで見切りをつける方が多いですね。
宮藤:従業員がキツいというのはわかるんですけど、「これは環境のためだ」って思って続けていくものなのかな…いや、伊藤さんだから続けられるのか。
伊藤:そういう方を募集します(笑)
宮藤:なるほど、ありがとうございました(笑)
