ビジネスシーンでイノベーションを起こしている経営者たちと、
クリエイティブの世界でイノベーションを起こしてきた宮藤官九郎との異業種対談企画。

今回のゲスト

川北朋子
株式会社CHOUETTE 代表取締役

川北朋子KAWAKITA TOMOKO

1968年生まれ。
保健師や看護師の資格を持ち、
地域包括支援センターで約10年保健師業務に従事。
看護ステーション モルスにて訪問看護業務を経て、
2020年株式会社CHOUETTEを設立。

2021年8月13日(金)

ゲスト川北朋子

TBSラジオで放送中の「宮藤さんに言ってもしょうがないんですけど」。パーソナリティは、宮藤官九郎さん。

日本の経済を動かす経営者や団体の代表の方に、哲学や考えを聞きながら、知られざる業界の実情に迫っていく「Innovative Lounge」。

お迎えしたのは、株式会社CHOUETTE 代表取締役 川北朋子さんです。

宮藤:会社名の“シュエット”というのは、どういう意味なんですか?

川北:フランス語で「感じがいい」「素敵な」とか。そういう意味でピッタリかなと思ったのと、あと「フクロウ」っていう名詞の意味もあります。

宮藤:あの、鳥のフクロウですか?

川北:そうですね。会社のマークがフクロウです。

宮藤:へぇ~。どういった事業内容なんですか?

川北:札幌市で「訪問看護ステーション」と「居宅介護支援事業所」っていうのを運営しています。お家にいる方に対して、看護師が訪問してお家で看護をする仕事です。ご利用者様ができるだけお家で生活できるように体調の維持とか環境を整えたりするステーションで、民間なので割と柔軟に対応しています。「緊急時も対応しますよ」って契約をしている方には、緊急時とか臨時で対応するんですけど、通常はシフトを組んで、「月曜と木曜の10時に行きますね」とか。

宮藤:なるほど。前もって決まっているんですね。

川北:そうですね。だいたいは前もって予定を組んで行ってます。

宮藤:派遣する看護師さんがいる事務所が、いろんな町にあるってことですね?

川北:はい。私たちの場合は、小さな事務所がありまして。シフトを組んで、そのシフトによってみんな訪問にでかけています。

宮藤:結構、町にあるんですか?僕が知らないだけで。

川北:あるんです!知ってほしい(笑)

宮藤:すみません(笑)川北さんは、どういう経緯で「訪問看護ステーション」を運営することになったんでしょうか?

川北:私は看護師と保健師の資格を持っているんですけど、もともとは運営する気は全くなく。病院でずっと働こうと思っていたんですが、「病院の中で限界があるんだな」と気付いて。「いずれは地域に出たいな」と思ってたんですけど、それが「訪問看護ステーション」だとは全然思っていませんでした。ただ、私、会社都合で2回程、退職になったことがありまして。2回目の時はすごく楽しい仕事、在宅の仕事をさせていただいていたんですけど、みんな一斉に退職になったのでバラバラになりました。その後、中堅ぐらいの病院の健診センターというところで保健師として働いたんですけど、「病院ってこんなつまらなかったかな…?」っていうくらいつまらなくて。

宮藤:えぇ!そうなんですか。

川北:3か月ぐらいで「もうダメだ」と。ちょうどその頃、前の職場でバラバラになった職員さんたちと会う機会があって、みんな病院に勤めていて同じように思っている人が何人かいて。「じゃ、在宅やってみようか」って話になり、「私が会社やったら、みんな働いてくれる?」という流れで、会社を作りました。

宮藤:じゃ、「もともと運営が得意で」というわけじゃなくて、誰かがやらなきゃいけないから「私やります」みたいな感じだったんですね。

川北:はい。経営もやったことがないですし、医療の制度も結構変わるので、いろいろと勉強しなきゃと思って、友人がやっている訪問看護ステーションに、学ばせてもらいに入りました。経営のことや実際のシフトの作り方、訪問看護の制度を学びながら職員をやりました。

宮藤:今までと全然違う人生ですよね。運営の苦労について、事前のアンケートに「人員」と書いていただいているんですけど、具体的にはどんなことが?

川北:うちで長く働いてくれる人材を採用するのが難しいですね。長く働いてほしいし、うちの会社のために一生懸命働いてほしいんですけど。

宮藤:なかなかそうはいかない?

川北:はい。自分もあちこち変わっているので、人のことは言えないのですが…看護師は割と転職率が高い業種ですね。

宮藤:ああ。やっぱりそうなんですね。

川北:「どうやったら長く働いてくれる会社を作れるかな」と思ってはいるのですが。なかなか。

宮藤:それは、何が原因なんですかね?

川北:「病気があるから」とか、あと年齢的なことや給与面も。「こんなに忙しいと思わなかった」というのもあります。

宮藤:体力的にキツいってことですね。

川北:イメージですけど、「訪問看護」ってお家に行って1時間とかいるんですよ。看護師さんが。だけど、病院ってひとつのお部屋に1時間ってほぼほぼいないじゃないですか。

宮藤:ああ。そうですね。

川北:だから、30分とか1時間とか90分とかいると、まったりしてのんびりして仕事できるんじゃないかみたいイメージを持つ人もいるようです。

宮藤:訪問看護のほうが、時間に追われずにのんびり仕事できるんじゃないかと。

川北:そのような気がして入っているみたいです。実際に病棟の看護師で1日関わる担当の件数とか、まあまああると思うんですけど、訪問看護ステーションだったら多くても6件とか8件とかなので、人数からしたら少ないと思うんですよね。

宮藤:そうですね。

川北:うちは一応4件以上を目標にしているんですけど。なんとなくイメージとしてはゆったりやっているようじゃないですか。でも実際には忙しくてカツカツだったりするので、「こんなに忙しいなんて」と思ったり、「イメージと違う」と。

宮藤:イメージですよね。

宮藤:それでは、川北さんが、業界の「ここが問題だな」と思うことを教えていただけますでしょうか。

川北:宮藤さんに言ってもしょうがないんですけど、「訪問看護ステーション」って、厚労省が「増やせ、増やせ」「足りない、足りない」と言って、どんどん新しく作られるんですけど、休止や廃止も多いんです。

宮藤:閉められちゃうってことですか?

川北:そうですね。うちもいつそうなるんだろうってドキドキしながら運営しています。

宮藤:どうして閉めなきゃいけなくなるんですか?

川北:人員が「2.5人以上必要」と決められているから、まずは2.5人確保できないと運営ができないんですね。

宮藤:ひとつの訪問看護ステーションにつき、2.5人。

川北:そうですね。2.5人以上いなきゃいけない。管理者がいなきゃいけないので、管理者が看護師も兼務していたら、要は3人以上は看護師は必要ってことになるんです。

宮藤:それが、さっきの理由じゃないですけど、「ちょっとキツいから辞めます」っていうことで足りなくなっちゃうってことですか?

川北:そうですね。それで2.5人に満たなくなったら、休止しないとならないんですよね。

宮藤:なるほど。事前アンケートに「増やすにも人件費がかかるけど、診療報酬や介護報酬は最初から決まっている」と。

川北:そうですね。割引もできないし、上乗せもできないので。

宮藤:これは国が決めたことですよね。

川北:そうです。例えば、いろんな訪問看護ステーションを作って、管理者とか責任者が一人いればいいんだったら、人が足りなくなった時に、他のステーションにご相談して、「誰々さんのところ足りなくなったから、何曜日お願いできる?」とか、事業所を何か所か合同でできるとか。そういうシステムがあれば、「やりたい」って思いの人たちで繋げていけるんですけど。でも、2.5人いなかったらできないので、その時点でどこかに吸収されるか休止するかになっちゃいますね。

宮藤:それぞれのケースがあるっていうことまで認めてもらえてないってことなんですよね?

川北:そうですね。今のところ制度上は、柔軟ではないです。

宮藤:需要は増えているんではないんですか?

川北:増えていると思います。入院期間が決められているので、その期間を過ぎたらお家に戻らなきゃいけない。看護師さんとかの見守りや処置、体調確認などが必要な方は結構いらっしゃるので。需要は増えているんですけれど。

宮藤:そうですよね。なのに、人員が2.5人に満たないからって閉められちゃっているっていう現実もあるわけですよね。

川北:そうですね。看護師さん、結構辞めてしまうので。「もっといいところないのかな」「待遇がいいところないのかな」とか。

宮藤:この問題は根深いですね。どうすれば…、やっぱり報酬ですか?働く人たちが気持ちよく働けるといいんですが。

川北:報酬って、診療報酬とか介護報酬って決められているんですけど、病院の診療報酬に比べて、やっぱり看護の報酬って少ないんです。その中で人件費や家賃といった経費を賄っていかなきゃならないから、病院と同じぐらいの給与は出せないんですよ。

宮藤:なかなか難しい現実がありますね。

川北:「報酬を上げる」にも、社会保障費とかも上げなきゃいけない。そうすると、社会保障費は今どんどん膨らんでいるから「閉めましょう、閉めましょう」って言ってますよね。それを減らすっていうことは、私たちの報酬が減るか、もしくは、やれることが減るかどっちかですよね。

宮藤:ああ。

川北:そんな簡単にはいかない。本当は「予防」に力を入れるべきだと思っていて。

宮藤:病気の?

川北:はい。病気や介護の予防に力を入れるのが、一番お金がかからないと思うんです。要は、病院に行くから薬をもらったり検査したりしてお金かかるんですけど、自分で体調を管理できれば、病気にならないし医療費もかからない。

宮藤:病気にならないっていうことが一番ですね。

川北:元気でいるっていうのがやっぱり大事なのかなと思うんだけど、日本って国民皆保健制度があるじゃないですか。

宮藤:はい。

川北:とってもいい制度なんだけれども、逆に予防とかには全くお金が反映されないじゃないですか。

宮藤:ああ、そうですね。

川北:例えば、「頭が痛いな」ってなって脳外科に行きました。で、CT撮ったりMRI撮ったりするのは保険がきくんですよ。

宮藤:はい。

川北:だけど、「脳に異常がないかどうか診てもらいたいな」だと、脳ドックで8万円とかかかるんですよ。自費で。

宮藤:そうですね。

川北:そういうふうに考えると、日本って予防にすごくお金がかかる国なんですね。「それってどうなの?」って思ったりするんですけど。

宮藤:具合悪くならないと保険がきかないってことですもんね。「高いから人間ドック行かなくていいや」とか、なっちゃいますよね。

川北:なっちゃいますよね。「病気になってからでいいや」ってなっちゃうと、やっぱり病気になる人が多くなっちゃうし、予防に対する意欲がわかなくなっちゃうから。本当は予防して社会保障費をバーッと減らしたほうがいいし、予防では抑えられない病気ってあるじゃないですか。先天性の病気だとか、原因不明の難病だとか。かかるなら、そちらにかけたほうがいいのに…と私は思うんだけど。

宮藤:やっぱりその医療の保険制度なのか、なかなか変わらないと難しいですね。問題がいっぱいあるってことがよくわかりました。ありがとうございました。

川北:どうもありがとうございました。

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