ビジネスシーンでイノベーションを起こしている経営者たちと、
クリエイティブの世界でイノベーションを起こしてきた宮藤官九郎との異業種対談企画。

今回のゲスト

小中村政一
スポーツフォトグラファー

小中村政一KONAKAMURA MASAKAZU

学生時代よりスポーツ写真(特に野球と競馬)に興味がありアルバイトとしても雑誌編集会社で勤務。高等学校を卒業後は競走馬育成牧場に就職をして、競走馬の馴致業務に従事。

■有限会社クローバーファーム 平成10年4月~平成11年12月:育成騎乗騎手、牧場所属馬のレース写真撮影

■株式会社ティーウェッブ 平成12年~平成17年:マンションプロバイダー、マンション竣工写真撮影、Web制作、マンションWeb制作、モデルルーム映像処理

■株式会社エフビットコミュニケーションズ 平成17年~平成18年:マンションプロバイダー、電話通信業務、通信事業の保守点検業務

■株式会社テラシステムプランサービス 平成18年~平成19年:通信ケーブル敷設業務、海外貿易業務

■株式会社アイディーユー 平成19年~平成21年:不動産業、通信業、金融、Web制作、映像処理

■カメラマン 平成21年~:主にプロ野球、サッカー、ゴルフを中心として現場で写真を撮影

2021年1月1日(金)

ゲスト小中村政一

TBSラジオで放送中の「宮藤さんに言ってもしょうがないんですけど」。パーソナリティは、宮藤官九郎さん。

日本の経済を動かす経営者や団体の代表の方に、哲学や考えを聞きながら、知られざる業界の実情に迫っていく「Innovative Lounge」。

お迎えしたのは、スポーツフォトグラファー・小中村政一さんです。

宮藤:スポーツフォトグラファーということですが、そこに至るまでの経歴がかなりすごいですね。「競走馬の育成騎乗騎手」というのは何ですか?

小中村:中央競馬のサラブレットが競走馬になるまで。要は、鞍を乗せたり、こうやったら走るんだよ、右に行くんだよ、というのを教えないといけない。その騎手です。

宮藤:さらに、兼 牧場所属のレース写真撮影もされていたと。

小中村:馬が好きだったので、所属している馬の牧場の写真とか、レースの写真を撮っていました。

宮藤:そのあとIT企業の立ち上げ、WEB制作からマンション竣工写真撮影。そして、通信工事業務を行う会社で上海支社を設立して支社長になった。なのに!2009年からフリーカメラマン。これはどういうことなんですか…?

小中村:ザクッと話しますと、騎手をしていて、身長が高いので体重減量をするのが大変でやめました。その頃、ちょうどITバブルだったので、ITの会社を立ち上げました。今でこそ当たり前ですけど、マンションにインターネットのLANケーブルを挿せるようにするのを最初にやり始めたんです。それでM&Aで売却しました。ITの世界がこれだけバブルだったから、国自体がバブルってどんなんなんだろう…っていう好奇心で、中国に行って、IT関係の業務をする会社を上海で設立して。で、29歳のときにITバブルもはじけて、中国もバブルがはじけかけたときにリーマンショック。一部上場の280人いた会社が、250人リストラになって、やめざるをえなくなりました。やめたときに、1回立ち止まって自分の人生を見つめ直したときに、何一つ、やり通してないなと。

宮藤:え!?まあ・・・いろいろやってますけどね。

小中村:10年以上続けてることって何なんだろう?と考えたときに、カメラが浮かびました。小学校低学年のときから鉄道が好きで、撮り鉄をしてたんです。ずっとやってたんですが、きっかけは、ただ電車が好き。競走馬が好き。

宮藤:カメラが好きだったわけじゃなくて、被写体が好きだったわけですね。

小中村:そうです、あくまでも道具だった。でも、それを20年間続けてるのは何なんだろうな?と。さすがに今までそれなりに稼いできて、いきなりカメラマンの世界に飛び込むのはリスキーすぎるな…とは思って。ただ、そこで下を向いても仕方なくて。どうせやるなら世界一とか世界唯一のカメラマンを目指してやっていこうと。これだけ20年続けてる自分自身にも興味があったし。これなら結果を求めていってもいいんじゃないか?と思ってやり始めました。

宮藤:現在は主に、プロ野球、サッカー、ゴルフを中心に写真を撮られていて、2010年南アフリカ、2018年ロシアのサッカーW杯を撮影。W杯って、僕でも知ってるW杯ですよね!?

小中村:そうです(笑)

宮藤:2018年にはFIFAの公認カメラマンに就任。2019年メジャーリーグベースボールオフィシャル撮影。2020年、本田圭佑選手オフィシャル撮影。FIFA公認カメラマンって何人くらいいるんですか?

小中村:世界でいうと、10人いるかいないか…

宮藤:マジですか!!日本人は1人?

小中村:日本人は僕1人です。アジアでも僕1人です。

宮藤:すごいな!スポーツの写真を撮るときにこだわっていることは何ですか?

小中村:一番大切にしているのは、撮りたい絵(写真)を想像しながら撮る。連射は全く使わないです。

宮藤:カシャカシャカシャカシャッ!てやつですね。

小中村:はい。野球で言ったら、ピッチャーが投げるときにボールと指が離れる瞬間を撮りたいとなったら。テイクバックのときに連射をしてしまったら、次はもう…

宮藤:速いんですね、手の動きが。

小中村:バットとボールが当たる瞬間は、100打席ずっと連射してたら1枚は偶然撮れていたとしても、毎回撮れるわけではないんです。それを、連射じゃない1枚で撮る。

宮藤:1発で撮ると。

小中村:合わせにいきます。

宮藤:へぇぇぇぇぇ!

小中村:ピッチャーがストレートを投げるのか変化球を投げるのかでタイミングが当然変わってくるので、そこはカウントをよみながら、このバッターとピッチャーの相性はこうだから、たぶん3球目、ストライクをとりにいくな!と思えば、ストレートでとりにいくピッチャーならストレートのタイミングで撮りにいきますし、変化球で三振をとりにいくピッチャーなら、変化球を狙って撮りに行きます。

宮藤:野球はまだそうやって、ピッチャーが投げるって決まってますけど、サッカーとか、何が起こるかわからない競技もあるじゃないですか。

小中村:例えばW杯で日本対ブラジルを明日、撮影するとなったら、ブラジルの前の試合・前の前の試合。日本の前の試合・前の前の試合の映像をずっと見ながら、どの選手がどういう動きをして、どういうサッカーをしたいかを見る。前日は朝から晩までずっと見ますね。その中で、あ、この選手のこういうプレイを1枚撮りたいなと思ったら、その1枚だけを狙いにいきます。

宮藤:期待するプレイをするかわからないですよね。文句言いたくならないですか?なんでやらないんだよ!

小中村:めちゃくちゃあります。ここやるところやろ!このパターンでここ入ったら、これしてたやん!というのはありますね。

宮藤:しょうがないですね…写真に写るために試合してるわけじゃないから。

小中村:はい。あくまでもカメラマンは黒子なので。でも、そのプレイをしたのに、その瞬間を撮れてなかったときには、もうすごく自分の中では…

宮藤:やってくれたのに撮れなかったと。ありますよね。

小中村:全然ありますよ。100%ミスをカバーすることは無理だとしても、そこを70%、80%カバーすることはできるので、そこをどう、事前の勉強なり予習なりをして、撮れる確率をあげていくかは、僕の仕事だと思っています。

宮藤:そのために資料をみて準備してるんですもんね。

小中村:試合のときは自分ができることは限られています。だからそこまでに、どれだけ自分が準備して撮影に挑めるかが大事ですね。

宮藤:では、そんな小中村さんが思う、業界の問題点を教えてください!

小中村:宮藤さんに言ってもしょうがないんですけど、フリーのスポーツカメラマンは、許可をいただくのがすごく大変なんですよ。

宮藤:え、撮影許可?もらえないんですか?

小中村:カメラマンは、風景だとか、自分が撮りたい写真をとって表現することが仕事だと思いますが、スポーツの場合、例えばW杯なら、FIFAに撮影許可をもらわないといけません。メジャーリーグならMLB。日本のプロ野球なら各球団。プロのカメラマンって、国家資格があるわけじゃないので、誰でもなれます。宮藤さんが「今日からプロカメラマンです!」って言ったらプロカメラマンなので。じゃぁ、そんな人全員に東京ドームのカメラマン席での撮影許可が出るかというと、そうではない。スポーツ報知のカメラマンです、読売新聞のカメラマンです、Numberのカメラマンですとか言って申請を出さないといけません。でもフリーだと、撮影することすらできない。

宮藤:そういう場合はどうするんですか?

小中村:フリーのスポーツカメラマンの多くは、新聞社などで働いて、独立してフリーになってます という形にはなりますが、球団的に言えば、もともと〇〇新聞にいたのはわかりますが、今、〇〇新聞じゃなければ、撮影はできません!と当然なります。〇〇新聞の人から「小中村君が今日、阪神・巨人戦の撮影に行くので許可をくださいね」と言って出すんです。 本当に何もないフリーのカメラマンが撮影するのは、世の中的には難しくて、無理なんです。僕もそれはなんとなくわかっていたので、じゃぁ海外に行って結果を残して戻ってきたらいいのかなと思って海外に行きました。海外の場合はどちらかといったら、「FIFAのカメラマンです」「MLBのカメラマンです」といっても、ダメなものはダメ。フリーのカメラマンでも、腕がいいとか、この人はメッシに認められているとか、手に職を持ってる人だから、許可を出しますと。フリーのカメラマンの地位が高いんです。

宮藤:日本と逆なんだ!

小中村:全く逆なんです。そのかわり、結果を残さないとすぐに入れなくなります。そこが大きく違うところなので、世界で結果を残せば、日本でも、そのブランドを引き下げて撮影ができる…という形を、僕は選んだんです。

宮藤:「お前、公認か何か知らないけど、いい写真撮ってないから来るな!」みたいな?

小中村:「お前の写真は誰にも求められてない」とはっきり言われます。

宮藤:シビアですね!日本だったら?

小中村:新卒1年目のカメラマンでも入れます。

宮藤:それは確かに、フリーの人が日本でやっていくのはキツイですね。

小中村:だから、世界で活躍して、結果を残している人が、撮影できる環境を作りたいなと思います。日本もグローバルスタンダードになると嬉しいですね。

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