ビジネスシーンでイノベーションを起こしている経営者たちと、
クリエイティブの世界でイノベーションを起こしてきた宮藤官九郎との異業種対談企画。

今回のゲスト

中原維浩
医療法人社団栄昂会 細田歯科医院・戸塚駅前トリコ歯科 理事長

中原維浩NAKAHARA MASAHIRO

1983年生まれ 北海道帯広市出身
2010年 東京歯科大学卒業
2011年 同大学の千葉病院総合診療科を修了
卒業後もヨーロッパ、アジア、南米など世界14カ国でも研修を重ねる。
2016年 医療法人社団栄昂会 細田歯科医院をリニューアル継承
医院・薬局などの待合室を様々な活動に使えるよう「待合室の革命家」として全国でスタッフ教育やセミナーを行う

2021年4月30日(金)

ゲスト中原維浩

TBSラジオで放送中の「宮藤さんに言ってもしょうがないんですけど」。パーソナリティは、宮藤官九郎さん。

日本の経済を動かす経営者や団体の代表の方に、哲学や考えを聞きながら、知られざる業界の実情に迫っていく「Innovative Lounge」。

お迎えしたのは、医療法人社団栄昂会 細田歯科医院・戸塚駅前トリコ歯科 理事長 中原維浩さんです。

宮藤:中原さんは、東京歯科大学を卒業後、オーストリアのウィーン大学などヨーロッパ、アジア、南米…世界14カ国で研修を行ったと。すごいですね。普通、歯医者さんになるのにそんなに必要なんですか?

中原:全く必要ないんですけど。

宮藤:なんでそんなに海外へ?

中原:趣味的なところもあったんですけど、日本よりもいろんな症例が見れることですね。特に手術の手技を身につける、日本で症例を積むためには、上の先輩方がいっぱい順番待ちをしているので。先輩達から症例をとっていくような感じになるので、なかなか若手のうちにチャンスが巡ってこないんです。海外に勉強に行くと、僕らでもやらせてもらえる。

宮藤:海外と日本だと、歯医者のスタイルとかシステムって違うんですか?

中原:全然違います。

宮藤:それは興味深いですね。現在は、東京と神奈川、2つの歯科医院で理事長としてご活躍ですが、中原さんは、歯科医療はもちろん、それ以外の分野で有名人で、通り名がついてるそうですね。

中原:はい。自分で言うのは恥ずかしいんですけど、『待合室の革命家』って言われています。

宮藤:待合室の革命家!?待合室で革命が起こるんですか?具体的には?

中原:今まで待合室って生産性がなく、ただ待っているだけのところだったんですけど、ことうちの医院だけに限って言えば、「ただ待っているだけの空間」から月100万円の売上が上がったんですね。

宮藤:えっ!何をしたんです!?

中原:歯医者さんに行くと、受付カウンターの少し右横に歯ブラシとか歯磨き粉とかちょこっとあると思うんですけど、あれを待合室の大半に置いて、雑貨屋みたいな待合室にしたんですね。

宮藤:待ってる間に商品を見たり買ったりもできるんですね。

中原:そうですね。雑貨屋感覚で選んでもらえるし、僕らプロ・専門家が本来であれば選ぶべきアイテムで、例えば、眼科で言うとコンタクトとかってちゃんと処方箋をもらわないともらえないようになっていると思うんですけど、歯ブラシとか、特に歯磨き粉は危ない成分とかが入っていたりするので。本来であれば、我々専門家がその人の症状とか目的に応じて選んであげたほうがいいと思っています。

宮藤:なるほどね。

中原:それで、たくさん種類を置いておいて。患者さんも選びたくなるようにしているし、僕らも処方しやすくできるようにしています。

宮藤:そうかそうか。「この人にはこれが合うだろうな」ってなったら、「それを買ってください」って言ってね。それは確かに革命的ですね。なぜ、そういうことをやろうと思ったんですか?

中原:実は大学時代、ABCマートで6年間ずっとアルバイトをしていまして。アルバイトの経験を何か歯医者に活かせないかなと思った時に、「ディスプレイとかPOPが活かせるな」と思ったんですよね。

宮藤:ああ、靴の!

中原:靴はさすがに売れないなと思ったので…

宮藤:待合室で?

中原:はい(笑)靴じゃなくて、歯ブラシと歯磨き粉をちょっとかわいく雑貨屋っぽくやってみたらいいんじゃないかと思ってやってみました。

宮藤:思わぬことが活かさるものですね。

中原:はい。意外と活きました。

宮藤:ABCマートでそんなに長く働いてたんですか?

中原:普通、歯医者の歯学部にいっている時点でお金持ちだと思われてるんですけど、僕は自分で学費を払う苦学生タイプだったので。自分で稼いでました。

宮藤:親は歯医者ではないんですか?

中原:歯医者だったんですけど、そもそも僕が歯医者になったきっかけが、親が脳梗塞で倒れたことで。

宮藤:じゃ、家業を継ぐ的な?

中原:はい。だから、当時収入がなかったんですよね。自分で行くしかなかった。

宮藤:それは大変だ。現在も、革命は進行中なんですか?

中原:そうなんです。今、厚生労働省も巻き込んで、2025年に向けて「待合室を地域の健康ステーションへ」という活動が進んでいまして。健康な時って、「自分が健康だな」って思わないと思うんですけど。

宮藤:そうですね。「普通だな」とは思いますけど。

中原:「健康を診る歯医者」って少ないですし、「健康を診る医者」っていうのもいないじゃないですか。

宮藤:どこも悪くないのに。

中原:はい。でも、病気と一緒で、「軽症」とか「重症」とかあるように、健康な状態も「ちょっと危うい状態」と、「めっちゃ健康」みたいな状態があるんです。そこのレベルを診断してあげられる、診てあげられるような医者が増えてくると、もっといろんな人が歯医者に来てくれるのかなと思っています。

宮藤:「重度の健康」「軽度の健康」みたいな?

中原:なんか言葉が悪いですけど、イメージとしてはそんな感じです!「2日間寝不足が続いたら、たぶんデッドゾーンに入っちゃいますよ」とか。それを先に予測してあげる。

宮藤:それは、なかなかですよね。病院ってどうしても具合が悪くなってから行くところですもんね。

中原:はい。なので、病院の中じゃなくて、あえて待合室で。待合室までは白衣も見なくて済むし、あまり血圧も上がらずに気楽に来れる人が多いかなと思うので。

宮藤:歯が悪くて行ったのに、違うところが悪いってことがわかったりする?

中原:そう、多々あるんですよ。

宮藤:おもしろいですね。

宮藤:そんな中原さんが「業界のここを変えたい!」と思っていることを教えてください。

中原:宮藤さんに言ってもしょうがないんですけど、医療法や保険の制度上、どの医院も似たようなカラーになっちゃっているのが、残念だなと思います。

宮藤:保険制度っていうのは、言ってみればそっちの方向にありますもんね。だいたい「一律こうだ」っていう。

中原:おっしゃる通りなんですよ。

宮藤:もっともっと個性があっていいんじゃないかと?

中原:本来であれば、そのほうが患者さんたちも選びやすい。普通は「近所だからこの医院に通っている」って言うと思うんですけど、本来であれば、僕らドクター個人個人を見てみるとそれぞれに専門性があって。例えば、僕だったら嚙み合わせが得意なんですよ。でも人によっては「歯周病が得意」「虫歯が得意」っていうのが。

宮藤:歯の中でもあるんですね。

中原:そうです。お口の中ひとつとっても、親知らずを抜くのが得意な人もいれば、お口の中の粘膜の状態を診るのが得意な人もいれば、顎の関節を診るのが得意な人もいる。本当は、そういうところを僕らももっと打ち出したいんですけど、医療法で広告が規制されているので、なかなか打ち出せないんですよ。

宮藤:僕の行きつけの歯医者も、何が得意か知らないもんな。話してみないとね。「俺、これが得意ですよ」って教えてくれればまだいいですけどね。おもしろいですね。

中原:みんながみんなオールマイティにできちゃう歯医者さんが多いので、たぶん患者さんもそこまで意識されないと思うんですけど、本来はみんながみんな専門家であると。

宮藤:他にも、歯科医師を生み出す環境にも問題を感じているそうですね?

中原:僕ら開業する歯医者さんが、10万人も歯医者がいる中で8割ぐらいなんですけど、開業ってことは一般の言葉で言うと「起業する」ってことですよね。みんなが起業家であり、代表取締役なんですけど、残念ながら大学6年間で経営を学ぶことができないんですね。

宮藤:そうか。歯のことは勉強するけど、経営は教わらないんですね。

中原:教わらないんです。僕らはプレイヤーでもあるし、エースでもあるし、監督でもありGMでもあるんですけど、全然経営者としてのスキルもマインドも学ばずに。

宮藤:プレイヤーの面だけ育てているんだ。

中原:「エースで4番になったら開業」みたいな(笑)

宮藤:やりながら学んでいくってことですか?

中原:そうですね。それぐらいしかなくって。

宮藤:向いてない人もいそうですもんね。お金のこととか。そういう時はコンサルティングの方を入れたりとかするってことですか?

中原:そうなんです。でも、ほとんどの人は「コンサルティングに入られるのも嫌」というか…。ドクターというプライドが邪魔するのか、だいたいの人が「自分の城」になるわけじゃないですか。そこに経営のこととはいえ、誰かにちょっかいを出されるのが嫌って思う人が大半なので。実際、センスだけで1割ぐらいの先生はうまくいっていて、残り1割はコンサルを入れていて、8割は何もしていない状態です。

宮藤:あら…。俺が行ってる歯医者、うまくいってるといいな…(笑)

中原:(笑)

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