ビジネスシーンでイノベーションを起こしている経営者たちと、
クリエイティブの世界でイノベーションを起こしてきた宮藤官九郎との異業種対談企画。

今回のゲスト

野田直裕
合同会社やさしい 代表

野田直裕NODA NAOHIRO

・法政大学経済学部卒業
・某中堅アパレル会社に入社、東京の百貨店中心に営業を3年間経験
・父親の会社でテキスタイルデザイナーとして勤務
・不動産管理業界に転身、団地の管理業務を行うとともに、NPOで民間マンションの管理コンサルタントとして活動
・障がい者グループホーム事業を始める

2021年7月30日(金)

ゲスト野田直裕

TBSラジオで放送中の「宮藤さんに言ってもしょうがないんですけど」。パーソナリティは、宮藤官九郎さん。

日本の経済を動かす経営者や団体の代表の方に、哲学や考えを聞きながら、知られざる業界の実情に迫っていく「Innovative Lounge」。

お迎えしたのは、合同会社やさしい 代表 野田直裕さんです。

宮藤:もう、会社の名前どおりの方ですね。やさしそうな。

野田:いえいえ。丸っこい顔なので(笑)

宮藤:これはもう、「やさしいが入ってきた」って思いましたよ。

野田:ありがとうございます(笑)

宮藤:会社名から既にやさしさが溢れていますが、どんなことをされている会社なんでしょうか?

野田:精神障がい者の方のグループホーム運営事業をしております。心の病ですね。代表的なところで言うと、うつ病の方ですとか。

宮藤:グループホーム「ぬくもりのさと」というところなんですね。愛知県で5つあるということですが。

野田:そうです。知多半島の真ん中辺りに半田市という市がありまして。名古屋からちょっと南下した、ちょっと田舎なところです。

宮藤:その障がいがある方の施設というのは、どういった事業なんでしょうか?

野田:うちは新築の大きな施設ではないんですけど、普通の一般住宅の古い住宅をリフォームして、家庭的な施設としてやっています。みなさんいったん病院に入られるとか、大型の施設で管理されている方が多いので。

宮藤:ひとつの建物に何人いらっしゃるんですか?

野田:うちは最大で5名です。まさに家族と同じ単位でやっています。

宮藤:5人に対して、スタッフさんはどれぐらいいらっしゃるんですか?

野田:スタッフは夕勤の方が1名、夜勤の方が1名です。1人で4、5人を見る感じです。

宮藤:本当に家っぽい感じ。

野田:まさにお母さんがわりみたいな。そんな感じです。

宮藤:職歴を見ると、野田さんは大学卒業後、アパレル会社やテキスタイル・デザイナーをやられていたと。テキスタイル・デザイナーってなんですか?

野田:私がやっていたのが婦人服地で。生地のほうですね。これの柄をデザインするというか、設計するというか。

宮藤:へえ。さらに不動産管理業など、今と全く違う、繋がりがあまりないお仕事をだいぶ
経験されているようですが。

野田:親の方針が「好きなことをやれ」っていう家庭だったんですね。そうなるとちょっと欲張りなんですけど、実は服も好きで、不動産もちょっと興味があって。で、「1回の人生だったら好きなことをやって死んでいきたいな」と。

宮藤:それが今、グループホームの運営に関わるようなきっかけは、何かあったんですか?

野田:私は不動産の業界で公団の団地を管理する仕事をしていたんですが、各地で使える家がどんどん壊されていってるんですね。昔の家って素材がすごくいいんですよ、木材も。今では手に入らないような立派な木材とか。そういうのがどんどん壊されてしまっている。やっぱり欧米とかはそういうのをリノベーションとかリフォームして大事に使っていくという文化があるのに、日本って、新築神話があって。

宮藤:そうですね。建て替えていきますもんね。

野田:その方向じゃないものもあってもいいかなと思って。

宮藤:じゃ、どちらかというと建物から入ったってことですか?

野田:そうなんですよ。

宮藤:おもしろいですね。それで今やられているのがグループホーム「ぬくもりのさと」ということなんですが、その「ぬくもりのさと」という名前にはどんな思いが込められているのでしょうか?

野田:実はうちの甥が全盲で、てんかん持ちで知的障がい者なんですね。なので、本当に妹夫婦が苦労をしているのをいろいろと。苦労もあり楽しさもありみたいなところはあるんですけど。ただやっぱり、いざ預けるとなった時にどういう施設がいいかというと、やっぱり自分の家族のように愛情を持ってぬくもりのあるような施設に預けたいっていう思いがあったんですね。それを聞いて、やるならそういう感じのアットホームなところをやりたいと思って。それで「ぬくもりのさと」と名付けました。

宮藤:空き家があって、身近なご家族の中にそういった方がいて、そこが繋がったということですよね。野田さんの中で。

野田:はい。僕の中で晩年になってもう競争社会からはちょっと一線を引いて・・・

宮藤:えっ、晩年?(笑)

野田:もう50歳にもなってきたので、中年になって自分の最終的な目標を到達させるために。晩年は、最後、社会貢献型をやりたいなと思っていまして。

宮藤:そうですか。で、「ぬくもりのさと」ではどんな方々が生活されているんですか?

野田:今生活している方が、結構幅広い年齢層の方で。10代から60代の方。10代の方でも日本の方だけではなくて、ブラジルの方も入っています。

宮藤:そうなんですね。ここに「福祉先進国・北欧のような、高齢になっても住み続けることができるよう、看護師や介護福祉士など、専門性を持ったスタッフを現場に配置して支援している」と書いてありますが、やっぱり日本は、そういう意味では遅れているんですか?

野田:そうですね。実は縦割り型で。障がいの施設は障がいの施設、高齢者の施設は高齢者の施設で、ミックス型が少ないんですよ。というかむしろ無いというか。

宮藤:そうなんですか。でも、どっちもっていう人もいますもんね。

野田:そうです。高齢者の方で、そこからうつ病になったり。それで、もともとうつの方が高齢になったり。

宮藤:逆に言うと、北欧にはそういうところがあるってことですか?

野田:北欧は、障がい者の方を最後まで「終の住処」という感じで「そこで看取る」みたいな。

宮藤:それは確かにこれから先、必要になりますよね。

野田:はい。そういう先進モデルがどんどん日本に取り入れられて、日本もそういう形になってくると思います。

宮藤:そして、施設を運営されていて、トラブルはいろいろとあるんですね。

野田:独特の個性をお持ちの方もいます。ただ、うちの施設はどちらかというと、おとなしい感じとか、生真面目な感じでカチッカチッとやりたい方がいて。

宮藤:具体的にどんなトラブルがあるんですか?

野田:ちょっと神経質になってしまって。例えば、うちで決められているルールがあるんですけど、それ通りに動けない方に対しては「なんで守れないんだ」となってしまう。でも、普通に生活していたら、多少は守れないこともあるので。

宮藤:何時に起きるとか、何時にご飯食べるとか、片づけるとか?

野田:はい。その時間がとても正確な方もいるんです。逆にできない方もいて。一緒にいると、気になってしまうんですね。

宮藤:なるほど。家でもそういうことありますよね。

野田:はい。兄弟でも性格が違うのと一緒で。僕は全部許容して、家族的なサポートさせていただいているというか。

宮藤:アンケートに書いてありますけど、「今後は、訪問医療や訪問看護、施設内看護の体制を整えながらやっていきたい」と。訪問っていうと、お家に行くってことですか?

野田:今は訪問看護師さんに、施設に来ていただいているんですけど、こういう小さい施設の弱点は、大病院のように医療体制や看護体制がかっちりしていないんですね。なので、普通の一般家庭でも在宅医療とか在宅ケアとかいろいろ訪問で受けられると思うんですけど、そういう形でうちみたいな小さい施設もケアを訪問で受けながらできたらと。そうすれば、大病院と同じようなサポートができるんじゃないかと考えています。

宮藤:なるほどね。スタッフさんって総勢何人ですか?

野田:うちは35人ぐらいですかね。

宮藤:福祉のなり手というか、人材はいるんですか?

野田:ちょうどうちが知多半島で、日本福祉大学という福祉に特化した大学があるんですけど、ただ、その福祉大学ですら、せっかく学んでも他業界にいってしまうと。

宮藤:そうなんだ。全然関係ない業界にいくんですか?

野田:そうなんですよ。

宮藤:なんでだろう?

野田:やりたいこととか社会貢献型っていうのは、良いとはわかっていても他業界と比べると収入が低いというか。

宮藤:ああ。なるほど。

野田:結婚して家族を養うとなると、基盤が無いと心細い。そういうことで、なり手が少ないんじゃないかなと感じています。

宮藤:会社として、どんな対策ができるんでしょうか。

野田:うちは小さい会社ですが、上場企業の大手企業と同じように確定拠出型年金みたいなものを取り入れているんです。いろいろな運用を選べるような。で、今具体的に動かしているのは、アメリカの株を7割、インドとかこれから伸びそうな株を3割っていうファンドで運用している。それを給与の前に財形みたいな感じで天引きしてやる仕組みが、小さい会社でも実はできるんですね。

宮藤:へえ。

野田:そこは、なかなか福祉の会社で取り入れているところは少ないと思います。

宮藤:やっぱり待遇がよくないと続かないですもんね。

野田:そうですね。僕がたまたま不動産系から入ってきているので。福祉の業界ではそういうボランティア精神とか、待遇が低くて当たり前みたいに思っちゃっているんで。業界自体が。僕はそれではない視点で。「ミックスでやったらどうかな」と。

宮藤:新しいこと、いろいろやられているんですね。どうもありがとうございました。

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