ビジネスシーンでイノベーションを起こしている経営者たちと、
クリエイティブの世界でイノベーションを起こしてきた宮藤官九郎との異業種対談企画。

今回のゲスト

鬼澤信之
医療法人あんず会 杏クリニック 理事長

鬼澤信之ONIZAWA NOBUYUKI

1983年 東京都生まれ
2008年 埼玉医科大学卒業後、埼玉医科大学総合医療センターの腎・高血圧内科に入局
2016年 32 歳で訪問診療を軸としたあんず訪問診療クリニックを開業
2018年 医療法人化にともない医療法人あんず会 杏クリニックに名称変更
開業から4年で500人の自宅療養患者を診察するなど、地域医療の中核として躍進。

2021年3月5日(金)

ゲスト鬼澤信之

TBSラジオで放送中の「宮藤さんに言ってもしょうがないんですけど」。パーソナリティは、宮藤官九郎さん。

日本の経済を動かす経営者や団体の代表の方に、哲学や考えを聞きながら、知られざる業界の実情に迫っていく「Innovative Lounge」。

お迎えしたのは、医療法人あんず会 杏クリニック 理事長 鬼澤信之さんです。

宮藤:どういう特徴のクリニックなんですか?

鬼澤:在宅医療ということで、病院に通えない患者さんの家に診察に行く。具合が悪くなったときは24時間対応する。そういう診療をやっています。

宮藤:たまたまですが、今書いているドラマで、在宅医療のことを調べてもらっていたんですよ。在宅でどこまでやれるのか、こういう病気のときは救急車で運ばなきゃいけないのか。在宅でもできるんなら、在宅の方がいいんだけど…といったことを。

鬼澤:まさにそういうことです!興味を持っていただいて、嬉しいです。

宮藤:24時間対応って、大変じゃないですか。

鬼澤:夜に具合が悪くなる方とか。最期まで自宅で過ごしたい方とか。夜も含めて対応するために、最初は1人でやっていて大変だったんですが、今は組織化してやっています。

宮藤:クリニックっていっても、病院自体は無いんですか?

鬼澤:みなさんがイメージする病院のような作りではなくて、事務所みたいなところで、そこに職員が控えていて、そこから出動します。

宮藤:それで、出先で診療すると。

鬼澤:はい。在宅医療というと、おじいちゃん先生が革かばんを持って自転車をこいでいくような、昔からのイメージを持つ方が多いと思うんですけど、家でとれるレントゲン・超音波・血液検査。そういった、病院でできる検査を家でもできるようにしようと。車に積んで、スタッフと24時間いつでも行く準備をしています。

宮藤:病院と遜色ない治療が受けられるんですか?

鬼澤:在宅医療といってもしっかりとした医療をやっていきたいと思っています。37歳の僕が院長をやっているくらいですので、比較的若いチームで、スタッフは20代30代が多いです。24時間なので体力が要りますしね。

宮藤:地域で診ている患者さんの数は、どれくらいなんですか?

鬼澤:地域に病院に通えないご高齢の方は本当に多くて、常に600人くらい診察しています。

宮藤:同時に何人の具合が悪くなるのかにもよりますけど、大変じゃないですか?

鬼澤:高齢者施設のような集団で生活しているところに訪問するパターンとご自宅に訪問するパターンとがあるんですが、我々は在宅医療専門チームとして、ご自宅にいる、重症度の高い方を中心に診ています。そのため同時に具合が悪くなることもよくあります。

宮藤:どうして、そういう風にしようと思ったんですか?

鬼澤:僕も最初は大学病院にいて、腎臓を専門にやっていて、最先端の治療とか、透析治療みたいなことをやっていたんです。でも、病院の外来に来なくなる人がいて。病院に通えなくなっているんですね。医者になって10年目くらいで「あの人たち、あの後どうなったんだろう…」とすごく気になり始めて。それで在宅医療にチャレンジしてみたら、世の中にはこんなにも病院に通えない患者さんがいたのかとビックリしました。病院の中で見てたのは、地域の一部で。それでこっちをやりたいと思って、10年目で病院を飛び出しました。

宮藤:それで、今のチームを作ったと。そんな鬼澤さんが思う、業界が抱えている問題点を教えて下さい。

鬼澤:宮藤さんに言ってもしょうがないんですけど、もっと医者にこそ、在宅医療の魅力を知ってもらいたいです。十分に知られていないのが問題点だと思います。

宮藤:患者さんじゃなくて、お医者さんの方に。

鬼澤:そうです。確かに、在宅医療は、必ずしも病気が完治するわけではないんです。でも、その人の人生のこだわりとか、生き方に寄り添って、必要な医療を取捨選択する。必要十分な治療を相談しながら選んで、人生にマッチするように提供していく面白さがあると思います。

宮藤:普通、病院に行くのが一般的ですもんね。在宅医療をやろうと思ったら、病院で働いてると、なかなかできないですよね。どちらも同じくらいいてくれたら、患者としては心強いですけどね。

鬼澤:その通りで、社会的な需要はたくさんあって。病院の中じゃなく、外にいるドクターを時代や地域は求めているんですが、ドクター側にその認識があまりない。医者にとって在宅医療は、少し敗戦処理のようなイメージがあって。治せない患者さんに寄り添っているだけと思われがちなんです。でも実際はさっき言ったようにめちゃくちゃ面白くて、しかも感謝されるんですよ。理解が足りない部分があるので、その魅力を発信して、興味を持ってもらいたいですね。

宮藤:将来、お医者さんになろうとか、病院で働こうと思っている人がいると思うんですが、何か伝えたいことはありますか?

鬼澤:医学生さんなんかと話すと、地域医療で活躍したいと思っている方、たくさんいるんですね。でもなぜか、病院の中で研修をしていると、病院寄りの頭になって、最先端の治療をしたいとか、研究をしたいとか、何となくそういう流れになっていきがちです。10年目で病院を飛び出して地域で活動している僕からすると、今は、地域にすごくドクターの需要、存在意義があって。そこを突き詰めていくと、本当に楽しくてやりがいのある仕事であるということを知っていただきたいです。これからの超高齢社会を乗り越える中で、地域医療に協力してくれる仲間が増えてくれると嬉しいです。

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