ビジネスシーンでイノベーションを起こしている経営者たちと、
クリエイティブの世界でイノベーションを起こしてきた宮藤官九郎との異業種対談企画。

今回のゲスト

大原彰
有限会社 大原工務所 代表取締役

大原彰OOHARA AKIRA

1971年 日本大学理工学部建築学科 卒業
(株)増田建築構造事務所 入社
1974年 同社退社
1975年 (有)大原工務所 入社、一級建築士資格取得
1981年 同社・代表取締役就任
1991年~2003年 財団法人 ベターリビング 窓系部品評価委員
2014年~ 東洋大学理工学部建築学科 特別講師

2021年1月15日(金)

ゲスト大原彰

TBSラジオで放送中の「宮藤さんに言ってもしょうがないんですけど」。パーソナリティは、宮藤官九郎さん。

日本の経済を動かす経営者や団体の代表の方に、哲学や考えを聞きながら、知られざる業界の実情に迫っていく「Innovative Lounge」。

お迎えしたのは、有限会社 大原工務所 代表取締役 大原彰さんです。

宮藤:大原工務所は、今年創業64年を迎える老舗だそうですが、長いですね。

大原:はい。一応、年数だけは長くやっております。

宮藤:何代目ですか?

大原:二代目です。

宮藤:ホームページを拝見すると、創業当時はもともと工務店ではなくて、設計事務所だったと。

大原:はい。父が建築士でして、設計事務所をまず始めて。

宮藤:設計事務所だから…家の設計ですよね?

大原:そうですね。図面を描くような仕事ばかりやっていたのが、そのうちお得意さんから「工事もやってみないか?」と言われて、工事もやりだして。なので、設計事務所の看板と、工事をする工務所の看板を2つ掲げて、名刺も2枚使い分けてやっていたような会社がスタートでした。

宮藤:そうなんですか。ご自身は、大学卒業後は建築の勉強をされていたんですか?

大原:そうですね。もともと建築はやろうと思っていました。設計の方に行こうとしたんですけど、その中の基本的な構造の勉強を…学生時代は怠けていたので、まずは勉強しようと思って構造事務所にいきまして。

宮藤:それは、普通に就職されて?

大原:そうですね。

宮藤:へえ。そこで勉強して。それで、どんなきっかけがあって、結局お家の会社を継ぐことになったんですか?

大原:構造がおもしろいなと思っていた矢先に、父が具合が悪くなりまして。こうなると、会社が危なくなってきて…。仕方ないので大原工務所に入って、なんとかやってみようと決心をしまして、始めました。

宮藤:それはおいくつの時ですか?

大原:27歳です。

宮藤:結構若い時に。じゃあ、取締役になられて結構長いですね。

大原:そうですね。もう40年になりました。

宮藤:どのくらいの規模の工務店なんでしょうか?

大原:金額で言いますと、年間5億ぐらいのものをやっております。新築の住宅とか小さいビルとか、いろいろなものが6件~10件くらいの間。その他に、補修や改修工事がたくさんありますので、そういうものを合わせると年間30件くらいやってるような、小さい会社ですね。

宮藤:ホームページに、これまでに大原さんたちが手掛けられた住宅の写真があったので、拝見したんですけど、結構風変わりなというか…変わったデザインのお家が多いですね。

大原:最初に割と難しい建物を手掛けてやったところ、それが雑誌に出てですね。「こういうのをやるんだったら、これもできるんじゃない?」って、だんだん難易度があがってきて。今、大変難しい仕事が増えてきてしまった…という。

宮藤:そうなんですね。「こういうものが作りたい!」というよりは、むしろ…

大原:「来たもの拒まず」でやっていたら、だんだんハードルが高くなってしまったというような、変な会社でございます。(笑)

宮藤:事前のアンケートに「経営者としては失格」と書いてあるんですけど、これはどういうことですか?

大原:そういう難しいものをとことんやろうとすると、やっぱり予算を度外視しちゃうんですね。ついつい、これをきちんと仕上げようとした時に「予算これだけしかないから出来ません」と言うとそこで終わっちゃうので、そこでなんとかやってしまう。やってしまってあとで計算してみると、「あちゃー、また利益出なかったか!」ということが続いちゃっていたので、経営者はそんなことやっちゃいけないんです。なので、経営者としては私は失格であるというふうに…。

宮藤:それはお客さんが喜ぶ顔が見たいとか?

大原:はい。やっぱりやる以上、いい加減なものを作りたくはないですから。きちんと仕上げる。そのために出ちゃったのは…まぁ、時々「すみません。予算オーバーしたので、少しください」っていうこともありますけども、なかなかみなさん予算を決めちゃうとそれ以上は出さないので。あとはもう、なんとかしちゃうという。

宮藤:自分たちで!? 持ち出しで!?

大原:はい。そういうことをずっとやってきたので、経営者としてはバツですね。

宮藤:なるほど。これ、経営者の哲学を聞くコーナーなんですけども(笑)

大原:はい、すみません(笑)こういうことのないように、という。

宮藤:そんな大原さんが、業界を代表して訴えたいことを教えていただけますでしょうか。

大原:宮藤さんに言ってもしょうがないんですけど、小さな建設会社や工務店がこれから生き残るためには、同業者と敵対するのではなく、一緒に手を組んでやるっていうことが必要だと思います。

宮藤:ああ。本来だと同業者ってライバルですよね。

大原:ライバルですね。仕事をどっちがとるかっていう話ですけども、とった仕事がなかなか難しいと、だいたいとらずに逃げちゃうんです。それをとって一緒にやることによって、今までできなかったものをその会社ができるようになると、その会社にとっても、とてもいいことなので、一緒にやることによってお互いの職人だったり、現場の監督さんだったりの力を高めていく。それで「うち、こんなものが出来たんだ」っていうのがわかると、喜びもあるし、その会社にとってもいいことになると思うんですよね。

宮藤:そうですね。

大原:お互いにそっぽを向くんじゃなくて、ひとつのものを2社で協力してやるといいことがあるよ! っていうことを言いたいですね。

宮藤:確かに、自分のところで全部これやっちゃおうと思ったら、それにかかりっきりになっちゃって他のことが出来なかったりしますしね。そういう時にやっぱり、「じゃあ、これはどっかの同業者と協力してやろうか」とか、そういうふうに業界全体がなっていくといいですよね。

大原:そうですね。小さい工務店がこれだけしかできないものを、2社になると2倍か3倍のものをできるんですよ。実際にやりましたし。うちでは。

宮藤:へえ! 今、実際に複数の業者と仕事されてるんですか?

大原:今もやっています。

宮藤:そうですか。そうすると、今まで自社だけではできなかったスケールの仕事が。

大原:スケールだったり、量ですね。例えば、1社だけだと5件しかできないものが、もう1社一緒になると6件、7件って増えていくので、そういう意味でもお互いにメリットがあると思いますね。

宮藤:でも、昔気質の職人さんだと、そういう考えにならないのでは?

大原:それを逆に「俺の技術はこれなんだ!」というのをお互いに出して、「そこはもうちょっとこうした方がいいんじゃない?」っていうのをオープンに話し合っていくことによって、それぞれ技術が高まっていくと思います。

宮藤:なるほど。柔軟な考え方が必要ですよね。

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