ビジネスシーンでイノベーションを起こしている経営者たちと、
クリエイティブの世界でイノベーションを起こしてきた宮藤官九郎との異業種対談企画。

今回のゲスト

大倉佳子
大倉佳子税理士事務所 代表

大倉佳子OOKURA YOSHIKO

1982年 東京国税局採用
2016年 税理士登録とともに大倉佳子税理士事務所開業

2021年1月8日(金)

ゲスト大倉佳子

TBSラジオで放送中の「宮藤さんに言ってもしょうがないんですけど」。パーソナリティは、宮藤官九郎さん。

日本の経済を動かす経営者や団体の代表の方に、哲学や考えを聞きながら、知られざる業界の実情に迫っていく「Innovative Lounge」。

お迎えしたのは、大倉佳子税理士事務所 代表 大倉佳子さんです。

宮藤:ご自身の税理士事務所の代表としてご活躍中の大倉さんですが、独立される前は東京国税局に30年以上お勤めだったそうですね?

大倉:そうですね。30年…すごく長いですけど。東京国税局にいました。

宮藤:「マルサの女」のイメージですが。

大倉:はい。よく言われるんですけど、マルサの女はやったことはなくて。「マルサじゃない女」で(笑)普通の税務署の調査部門とか、例えば「宮藤さんのところに調査に伺いたいんですけど」っていうようなポジションでの仕事をさせていただいてまして。

宮藤:それはマルサじゃないんだ?

大倉:マルサは“強制”なので。私は強制ではなくて、普通に「行きたいんですけど、行ってもいいですか?」って言ってから伺うような調査部門におりました。

宮藤:そうかそうか。「♪トゥールル ルールル ルール」っていう曲が頭の中で今。「来るのか…」って思って(笑)

大倉:でも、やってることはその縮小版みたいな形なので、ごみ箱も見ますし…。

宮藤:やっぱりそうですよね。そして、大倉さんは国税局の女性第一期生として就職されたんですね。

大倉:そうです。国税という職場…「税務職」って言われている、一般職とは違う特殊な3文字が頭についてまして。それまで、普通の国家公務員の「行政職」という一般的な方で女性はいたんですね。だから、総務とか会計っていう普通の事務職でいらっしゃたんですけど。私は商業高校出身で、一応真面目で普通に生活をしていたんですけど、大学に行くには学費が…って思っていた時に、たまたま一期生が税務職で採用されるっていうパンフレットを見かけて、「これちょっと面白いかも」っていう流れで受験させていただいたんですね。

宮藤:じゃあ、時代の変わり目?

大倉:そうです。ちょうど変わり目で。だから我々の「女性一期」と言われているところから、ちょうど女性も調査に行ったり。あとは、たまにテレビでもやっていると思うんですけど、税金の徴収ということで差し押さえとか。あのカバンを持って行くのも、女性も行ってもいいですよっていうような形で。

宮藤:今までは男性だったけど?

大倉:そうですね。女性もだんだん外に身分証明書を持って行くような流れの中に入りこめたっていう感じですかね。

宮藤:そうなんですか。あとは、今までは、言ったら「使われる側」というか、給料をもらっていたのに、今度は自分が経営者になったわけですよね。。

大倉:そうですね。「税理士をやる」と決めて、たまたま何人かお声がけをいただいたんですけど、その時は私、会計ソフトも入れてないぞ、と。パソコンはあるけれど。

宮藤:ええ。

大倉:パソコンのエクセルで出来る程甘くはないし。帳簿を打ち出してあげるコピー機の複合機とかもないぞ、と。FAXももらえないぞって思った時に、じゃあ会計ソフトはどこかから入れなきゃいけない、複合機も設置しなきゃいけない、さぁこれはどこに何をアクションを起こしたらいいのか?っていうことで。

宮藤:ゼロから揃えるんですね。

大倉:それまでは、調査に行くと「こんなシステム高いんじゃないですか?」とか「機器また導入したんですか?」とか、「新しいの買い替えたんですか?」とか平気で言ってたのが…(笑)自分で入れてみると、「うわ、複合機高い!」とか「会計システムって年間こんなに利用料が!」って。メンテナンスも含めてあるので。先行投資が「あっ、こんなにするんだ!」と思って。決算書に書いてある金額は、あながち間違いではないなと。

宮藤:今までは徴収する側だったのが、今度は自分が徴収される側に。

大倉:される側なので、しっかりと帳簿と契約書は残しています!

宮藤:そうか、そうですよね。そして、仕事の依頼が来た時に、税理士の報酬をいくら請求するかっていうのも、わからなかったと。

大倉:そうですね。今までは月給で、決められた俸給表に従ってもらえたお金が自分のお給料っていう形だったんですが、自分で決めることになる。税理士って、例えば「1日調査に立ち会ったからいくら」っていう規定がないので。

宮藤:そうか。

大倉:確定申告書1枚作成して帳簿も作ったら、個人の方だったらいくらですね、といった表が何もなかったので。はじめは「こんなに請求してもいいのか?」とか、「いくらもらったらいいのか?」とか全くわからなかったので、その5万円だったら「5万円」って言うのがすごい怖くて。

宮藤:なるほど、独立するとそれですよね。自分で値段を言わなきゃいけないですもんね。

大倉:「5万円」って言ったら、すごく高いと思われるんじゃないかっていう感覚とか、法人の毎月もらっている顧問料も、毎月3万円って言うのが妥当なのか、1万円じゃないと私は雇ってもらえないのか、全くわからなかったので、最初は本当にドキドキしていました。その当時からお付き合いさせていただいている法人の社長さんとか、個人の事業主さんとかはすっごく安いです(笑)

宮藤:そっか。もうちょっと高くても良かった…っていうぐらい?

大倉:格安料金で、今も値上げするのが怖くて。その方たちはそのままの料金です。今は料金表を決めて「うちはこういった場合はこれくらいいただきます」とHPにも出てるので「これ以上でもこれ以下でもありません」って言って、それで契約させていただくんですけど、「1年目はいくらでしたか?」って言われたら、絶対に言えないです…。怖くて(笑)

宮藤:大倉佳子税理事務所では、特にどのような業務に力を入れているんですか?

大倉:私は国税の時に「個人課税」という、いわゆる確定申告メインのところがフィールドワークで一番長かったんです。確定申告がこれから始まりますが、フィールドとしては今もそれが7割くらいですかね。あとは、法人の方ともお付き合いさせていただいていますね。

宮藤:あと、「マッチングコンサルタント」として、「W-HEART」というものをやっているんですか?

大倉:はい。本当は税理士ではなく、こちらの方がやりたくて仕事を辞めたっていう部分もあるんですけど。「W-HEARTマッチングコンサルタント」と銘打って、働く女性の気持ちと会社の気持ちというか、その辺を繋ぐコンサルをやらせていただいています。

宮藤:「W」っていうのは、「Woman」と「Working」なんですね。どういうお仕事か、詳しく教えてもらってもいいですか?

大倉:女性がどうやって働きたいかとか、これからどういうふうにキャリアアップしていきたいかっていうところと、それプラス、会社側が女性をどういうふうにバックアップしていきたいかや、どう働いてもらいたいかっていう。それが両輪じゃないと進まないと思うんですね。

宮藤:需要と供給が。

大倉:そうなんです。なので、それを繋ぐ仕事をさせていただいています。

宮藤:なるほど。そんな税理士として、そしてコンサルタントとして活躍している大倉さんが思う、業界のここを変えたい!という問題を教えてください。

大倉:宮藤さんに言ってもしょうがないんですけど、まだ「役員」に対して女性の登用は全く進んでないのが現状です。

宮藤:2003年に政府が『指導的地位に占める女性の割合を、2020年までに30%にする』という目標を掲げたんですよね?まだ30%になってないってことですか?

大倉:到達は全く見えていないんではないでしょうか。

宮藤:やっぱり…。

大倉:30%って3分の1なので、課長級以上が役員と言われてますけど、課長以上に3分の1の女性がいるかっていうと、たぶんいらっしゃらないかと…。

宮藤:いないですね。

大倉:何でもそうなんですけど、国家公務員とか地方公務員が先陣を切りなさいって言われるんですね。でも実際、国家公務員でさえ30%までは到底いっていない状態です。たぶんこの目標も、2020年代っていうのにすり替わったので、まだ全然進んでないですから。

宮藤:やっぱり、ご自身が一番最初に女性第一期生として働いたからっていうのもあるのかもしれないですよね。「女性がどんどん新しい仕事に」っていうのは。強くあるんでしょうね。

大倉:そうかもしれないですね。当時はちょうど時代が女性にも振り替わってきたというか、どんどん門戸が広がりますよって言われて。男女雇用機会均等法とか、共同参画とか色々言われて、どんどん変わってきた時代にたまたまいて、育児休業も途中で出来て。

宮藤:そうかそうか。

大倉:初めに出来た時に、「育児休業って何?」っていう感じでしたもんね。

宮藤:そうだったんですか。

大倉:って言っても、私は第一子を出産した頃は、育児休業制度はなかったので。

宮藤:ああ、その後なんだ。

大倉:そんなこともあって、女の人がこれからどうキャリアアップしていきたいのかっていうのは、切実に思ってたのかもしれないです。

宮藤:でも、税理士もコンサルティングも、お客さんとのコミュニケーションが信頼関係を築く上では大事だと思うんですけど、今はコロナで結構大変なんじゃないですか?

大倉:そうですね、私は埼玉で事務所を開業しているので、都内のお客さんと会うにも「県を跨いじゃダメよ」っていうのがあって、お互いに遠慮があったりとかもしてたんですけど、やっぱり顔を見ないとわからない部分もあります。電話で「所得控除が」とか、「課税所得が」とかって言っても、みなさんなかなかピンとこなくて。やはり噛み砕いたり、書類で「ここはこうなってね」と話すと、「あっ、それは納得できます」っていう方も多いです。でも、やっぱり会うのは厳しいので、とりあえず出来る限りのツールは駆使しています。

宮藤:大変ですよね。リモートでもやっぱり限界ありますもんね。

大倉:そうですね。Zoomで打合せをすることもあるんですけど、やっぱり限界が見えてくるので。Zoomって顔は合わせるんですけど、顔色はわからなかったりとか。

宮藤:そうですね。

大倉:書類を画面に見せてもわからない時があるので、必要最低限の打合せはやっぱり「人対人」で、最後はやらせていただいたりとか。お客さんによっては、「こんな時期だから事務所の中じゃなくて外でやろう」って、自宅兼事務所の玄関先でやってたりとか。みなさん気を遣っていただいて、助かっていますね。

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