ビジネスシーンでイノベーションを起こしている経営者たちと、
クリエイティブの世界でイノベーションを起こしてきた宮藤官九郎との異業種対談企画。

今回のゲスト

大島雅生
株式会社スパイラル研究所 代表取締役

大島雅生OOSHIMA MASAKI

1992年 株式会社リクルート入社、情報システム部門配属
2017年 ITアドバイザーとして独立
2018年 株式会社スパイラル研究所を設立

2021年3月26日(金)

ゲスト大島雅生

TBSラジオで放送中の「宮藤さんに言ってもしょうがないんですけど」。パーソナリティは、宮藤官九郎さん。

日本の経済を動かす経営者や団体の代表の方に、哲学や考えを聞きながら、知られざる業界の実情に迫っていく「Innovative Lounge」。

お迎えしたのは、株式会社スパイラル研究所 代表取締役 大島雅生さんです。

宮藤:スパイラル研究所は2018年に設立されたそうですが、どのようなことをしている会社なんでしょうか?

大島:ITに関する、会社さん宛にアドバイスをする、「ITアドバイザー」という感じの仕事でございます。

宮藤:ITアドバイザー?企業の経営者とか、情報システム部門へのアドバイスですか?

大島:そうですね。

宮藤:そうなんですか。ITのことを全然知らないので…。

大島:ああ、そうですか。

宮藤:知らないし、知らないまま死んでいくんだろうなと思っている(笑)

大島:残念な…(笑)

宮藤:残念なんで、今日はせっかくなので変えていただこうかなと思います。

大島:はい。ぜひぜひ。

宮藤:早速、大島さんが世間のITについての考え方で「変えないといけない」と感じていることを教えていただけますでしょうか。

大島:宮藤さんに言ってもしょうがないんですけど、ITっていうと「コンピュータが得意な人」っていうイメージなんですけども、その構図を根本的に変えたいと思っています。

宮藤:えっ!そうじゃないんですか!?だって、コンピューターが普及するのと一緒に普及した言葉ですよね?「IT」って。

大島:そうですね。「IT」は“Information Technology”なので、「情報の技術」。情報を人に伝えたり、情報を管理するためにある技術なんですけど、みんな技術のことばかり気にしてるんですね。

宮藤:“テクニック”の方の?

大島:「今こんな先端な技術があるから、なんかこれを使おう」とか、今デジタルデジタルって言ってなんでもデジタル化するんだっていう風潮があるんですけど、その前に“Information”っていう「情報」があるだろう、と。情報をどうしたいのかが、ITの本質なんですよ。

宮藤:ああ、なるほどなるほど。

大島:何の情報を、誰のために、どんなふうに管理するのか。誰に伝えるのか。何を使って伝えるのか。やりたいことがあって、そのためにこの技術を使いましょうっていうふうに考えるのが正しいんです。

宮藤:そうですね。

大島:それが逆になっていて。「この技術をなんとかしたい」とか、「新しい技術を使おう」「これで何かおもしろい仕事ができるだろう」みたいな風潮になっていて、肝心な「情報」のことが後回しになってしまう。だから、本当を言えば「情報をこういうふうにしたいんだ」っていうのがあって、コンピューターを使う必要がないこともあるし、ちゃんと自分の手で管理したほうが早いっていうこともあります。そういうことが、置き去りにされてしまっている。

宮藤:ITっていうのを「=コンピューター」っていうものじゃない?

大島:もう、その考え方をやめましょう。

宮藤:もしかしたら、アナログなことが一番効率的だったりするってこともあるっていうことだ。

大島:そうです。もちろん、コンピューターの方がいいこともいっぱいありますけど。そういうことを最初に考えないうちに技術に走ってしまうのが、世間一般の風潮。そこに「ちょっと待ちましょうよ」と言いたいです。

宮藤:それぞれの経営者とか、アドバイスする人にそれを伝えてるってことですね。

大島:そうですね。

宮藤:へえ!だからITって、僕も苦手意識があるんですよね。

大島:それは、コンピューターが得意な人だけが集まって勝手にコンピューターでなんかしちゃってるから余計に、苦手な人が置いてけぼりになってしまっているので。

宮藤:そういうイメージですよね。

大島:そういう構図になってしまっているので、そこを変えたいんですよね。苦手な人だって、ITはできます。

宮藤:なるほど。具体的にどういった場面でそういうことを感じたりしますか?

大島:ずっと会社の情報システムの部門にいて、たくさんのシステムを作ってきたんです。だいたい「システム作ろう」ってなると、「予算がいくらだ」「人を何十人集めろ」って人がガーっと集まって、「ここから何か月間やるぞ!」と言ってスケジュールが引かれて、「やれー!」ってグワッと動いちゃうんですよ。そうすると、最初の「何をやりたいんだ」とか、情報の話が後回しになってしまって、とにかく作りなさい作りなさいになってしまう…。

宮藤:ああ…。

大島:「とにかく、期日までにシステム作らないと大変だから!」って言って。

宮藤:“システム”をね。

大島:「システムを作るプロジェクトだ!」ってなっちゃうと、もうプロジェクトを完成させることが先決なので。そうすると、もうみんな血反吐吐きながら作ったりするんですけど、せっかく出来上がっても、「これ、何のために作ったんだ?」ってよくわからなかったり、もともとやりたかったものと全然違うものになってたり。あと、「使う人がどこにもいないじゃないか」とか…。

宮藤:ああ…(笑)

大島:結構、日常茶飯事で。実はこれは、今の社会でもこういうことは新聞見ると載ってますよね。せっかく作ったものが使われない。アプリとか。そういうケースがたくさんあります。

宮藤:確かに…。なんとなくそれを導入したことでやった気になっちゃうんですよね。

大島:そうなんですよね。

宮藤:俺なんか、スマホをどんどん周りの人が新しくしていってるのを見て、最初のうちは「俺も!俺も!」って新しくしたけど、結局使ってるのは5%ぐらいの機能じゃないですか。

大島:そうだと思います。

宮藤:ってなると、導入していつでもそれができるようになるってことで終わっちゃってるんですよね。

大島:企業もそうですね。新しいものにすぐ飛びついたりとか、「他のライバル会社よりも先に新しい技術を入れよう!」とか。そういう動きがどうしても出てしまう。

宮藤:なるほど。

大島:後のことを考えないっていうのがすごく多いですよね。「作ってしまえばとにかく勝ちだ」と。でも、作った後に使う人のことを考えてないとか、使った後に毎月かかるお金のこと考えてないとかですね。そういうのがすごく多い。

宮藤:俺、それで言ったら、エクセルっていうのがあるじゃないですか。

大島:はい。

宮藤:みんなエクセルエクセルって言ってた頃に、エクセルを使えるようにならないと俺はダメなんじゃないかと思って覚えたのに、結果使わないってことに…。「俺の仕事にエクセルはいらないんだ!」って気が付いて(笑)

大島:そうですか…(笑)

宮藤:もう全部忘れました。でもいいんだ、もう使えなくてこのままいけるんだ、って。

大島:いらないものは最初からいらなくてよかったっていうことなんですけど。

宮藤:そういうことですよね。

宮藤:では、大島さんの、経営業の苦労についても教えていただけますでしょうか。

大島:宮藤さんに言ってもしょうがないんですけど、今言ったようなこと会社さんに直接言っても、なかなかわかってもらえないと言いますか…。結局、僕の言っていることは、ちょっと勢いつけて走っているのを止めるような形になってしまうので。

宮藤:なるほど。今あっちに向かおうとしているのを。「それは必要ないですよ?」ってことですもんね。

大島:そうです。「そんなことを言われても、いやいや、今やるんだから」ってなってしまいますので。で、仮に言うことを聞いてくれたとしても、後になってから証明できないんですよね。僕が正しかったことを。

宮藤:ああ。そうか。

大島:「やらなかったから、よかったでしょ?」って言えないんです。

宮藤:「やったから、よかったでしょ?」なら言えるけど、「やらなくて正解だったでしょ?」っていうのは…

大島:そうなんです。証明できないので。

宮藤:やってた時のことは、想像でしかないですもんね。

大島:そうです。だから、僕のありがたみが伝わらないんです。

宮藤:ああ…そっか。なんか損ですね。それって。でも、「あなたが今やろうとしているこれは、あなたにとって本当に必要なことですか?」っていう仕事なわけですもんね。

大島:そうですね。

宮藤:で、それが「必要ないですよ」ってことを言うってことは…そうですよね。その結果は…。

大島:「なんだよ、せっかくやろうとしているのに水を差すようなことを言いやがって」って言われるだけなんで。

宮藤:2人いないと無理ですよね。それを使う人と使わない人とね。

大島:そうですね。両方やって。

宮藤:両方やって、「ね?あの人ダメになったでしょ?」っていうことを証明しない限り。

大島:そうですね。それはできないんで。

宮藤:でもそれって、自分ではわからないことを客観的に教えてあげてるわけですよね。教えてあげてるって言うとちょっと上からになっちゃうけど。無意識に本人は意識していないことを「あなた、こういうことをやろうとしてるんですよ?」とか、「あなたがやりたいのはきっとこれだろうから、これはいらないんですよ」とか。

大島:そうです。

宮藤:まあ、それが自分でできればできるに越したことないんですけどね。

大島:なかなかそこは気付かないと思います。

宮藤:大変な仕事だ!

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