ビジネスシーンでイノベーションを起こしている経営者たちと、
クリエイティブの世界でイノベーションを起こしてきた宮藤官九郎との異業種対談企画。

今回のゲスト

太田八千穂
川間太田産婦人科医院 院長

太田八千穂OOTA YACHIHO

1962年 私立開成高校卒業
1963年 東京慈恵会医科大学入学
1982年 同大学講師
1985年2月 川間太田産婦人科医院開業

2021年2月12日(金)

ゲスト太田八千穂

TBSラジオで放送中の「宮藤さんに言ってもしょうがないんですけど」。パーソナリティは、宮藤官九郎さん。

日本の経済を動かす経営者や団体の代表の方に、哲学や考えを聞きながら、知られざる業界の実情に迫っていく「Innovative Lounge」。

お迎えしたのは、川間太田産婦人科医院 院長の太田八千穂さんです。

宮藤:川間太田産婦人科医院さんは、千葉県野田市で開院されて昨年で35周年だったそうですね。35年ずっとやっているんですか?

太田:昭和60年2月1日に始めましたから、37年目に入っています。

宮藤:最初はどういう経緯で開業されたんですか?

太田:足立区東部の五反野っていう駅で父が昭和戦争中に開業していて。兄がいまして、東京大学医学部卒でね。その中に、手も足も出ない学力の私がいるもんで。兄が東大の方で道がなくなったらしくて。東武野田線の川間っていう駅で開業いたしました。

宮藤:ほう。

太田:非常に自然があっていいところなもんだから、全部そこにつっこんじゃいました。

宮藤:川間太田産婦人科医院さんでは、具体的にはどんな診療を行われているのでしょうか?

太田:産婦人科一般、出産・分娩、初期及中期人工妊娠中絶術と、膣式子宮全摘出術を。膣式手術を教えてくれた辻啓先生が、その手術の一人者で。私がたまたま兄がいることで、その先生にお近づきできて、教えていただきました。

宮藤:それは、まだその時代はあまりなかったんですか?

太田:昔からある方法ですけど。要するに、子宮をとるのに地下鉄を掘るのと同じでね、お腹開けて掘るのは普通の方法でね。それを「膣式」って言って、膣の方から取るシールド方ですね。そういう手術を非常に安全に辻先生が開発されて。「辻式三回結紮子宮全摘出術」っていう方法ですね。その昭和一桁生まれの人たちの気持ちっていうか志っていうか、それがね、私の考えてることとすごく一致したんですね。

宮藤:事前のアンケートに、「今考えてみると、手術は戦争だった」と書いてありますが、具体的にはどういうことでしょう?

太田:3年ぐらい前にやめて、いわゆる膣式手術が無くなって、「あれはなんだったのかな?」と振り返って考えてみたんです。非常に戦闘状態だったんじゃないかな。そういう実写がね。ウォルフガング・ペーターゼンの『U・ボート』っていう映画を観てるとね。5、6回は観ました、一生懸命。膣式手術の実写の非常に学習しなきゃいけない映画だと思っているんですね。

宮藤:そうなんですか。『U・ボート』…? 映画の?

太田:『U・ボート』。私なんかは一生懸命観ましたよ。開業する直前に、東銀座の松竹ピカデリーかな。そこで観たんですね。

宮藤:そんな太田さんが、常に命を扱うお仕事をされている中で心がけていることなどはありますでしょうか?

太田:事故を起こさないことでしょうね。

宮藤:やっぱりそうですよね。

太田:いい加減な気持ちでいると、すぐ答えが出ますからね。特に膣式手術はそれ相応のことやっているから。血管含めた部分を離しちゃって、向こうにいっちゃったらおしまいですね。手元に全部寄せておいてね。それを非常に安全にされた、あそこまで考えついた辻先生っていうのは立派だなと思っています。

宮藤:そんな太田さんが思う、業界が抱えている問題点を教えてください。

太田:宮藤さんに言ってもしょうがないんですけど、最近、「エビデンス」という言葉で抽象的な説明をする人が多いんです。

宮藤:流行ってますよね。「エビデンス」ってね。やっぱり聞かれます?

太田:医者の集まりがあって、この2、3年の話ですけど、やたらと「エビデンス」と出てきてね。なんのことかわからないのね。

宮藤:そうですよね。

太田:私たちは少なくとも、35年、40年前…4、50年前には聞かない言葉ですね。

宮藤:そうですね。僕も2、3年ですね。

太田:「エビデンス」って言葉で一生懸命統一するような。「そういう概念で君たち全部まとめなさいよ」っていうような、指令があるような気さえしますね。

宮藤:「根拠」とか「証拠」とか「データ」とか、そういう言葉ですよね。意味で使っているのはね。

太田:だから、何言ってるかわからないですよ。

宮藤:そうですよね(笑)

太田:新聞にもたまに出てきてね。テレビはほとんど触れてないね。なんか、学会上で、やたらと出るね。

宮藤:まあだから、「エビデンス」って言っておけば、みんななんとなくわかったような気になれるっていう言葉ですよね。

太田:そんな感じだよね。すごく危ない言葉じゃないかと思うんですけどね、私は。私の今まで経験したことを振り返ってみると、「嘘だろう?」「本当のこと言ってないんじゃないのか?」って言われているように、私は感じます。

宮藤:なるほど。たぶん、今流行りで使っているだけで、そのうち誰も言わなくなるような気もしますけどね。ありがとうございました。

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