ビジネスシーンでイノベーションを起こしている経営者たちと、
クリエイティブの世界でイノベーションを起こしてきた宮藤官九郎との異業種対談企画。

今回のゲスト

酒井圓弘
妙乗院 住職

酒井圓弘SAKAI ENKO

1963年 愛知県蒲郡市生まれ
1990年 天台宗の総本山比叡山延暦寺に入山
1992年 妙乗院に入る
1993年 佛教大学卒業
2005年 第25代住職
2019年には、アメリカ カリフォルニア州立 サンノゼ大学やサンフランシスコ日本領事館主催で講演
2020年 株式会社アロハネットワークジャパン/アロハネットワークハワイ・インコーポレイティド(米国法人)/宮古島ウェディング&プロデュース株式会社 の相談役に就任

2021年6月11日(金)

ゲスト酒井圓弘

TBSラジオで放送中の「宮藤さんに言ってもしょうがないんですけど」。パーソナリティは、宮藤官九郎さん。

日本の経済を動かす経営者や団体の代表の方に、哲学や考えを聞きながら、知られざる業界の実情に迫っていく「Innovative Lounge」。

お迎えしたのは、妙乗院 住職 酒井圓弘さんです。

宮藤:妙乗院さんは、愛知県の東海市にあるお寺ということですが、酒井さんは今どんなことをされているんですか?

酒井:15年前に妙乗院というお寺の住職になりました。それから、現代社会に合う寺づくりを、地域にも密着しながらいろんなことをさせていただいてきました。

宮藤:お寺って、現代に合わせてアップデートするのを良しとされているんですか?

酒井:以前まではそれはちょっとダメでしたね。

宮藤:やっぱり。

酒井:だけど、現代社会になって、いろいろなことがスピード化されて、信仰心とか宗教離れが始まりまして。

宮藤:そうなんですか。

酒井:それも含めて、若い人にどうやって来てもらったらいいのか。そして、お寺に来て、どれだけ長く居ていただけるのかを考えながら、お寺づくりをしてきました。

宮藤:「長く」というのは、それだけ仏様の教えに触れる時間が長いということですか?

酒井:そうですね。私のお寺に来るかたは、だいたい滞在時間が3時間ぐらい。

宮藤:長いですね!

酒井:見るところがいっぱいありまして。すぐに帰らなくてもお話を聞いたりとか、滝行をやったりとか。お寺の正面にステンドグラスがはめてありまして、それがまずビックリされますね。「なんでこんなところに?」と。

宮藤:お寺なのに!?

酒井:固定概念ですね。「お寺でステンドグラス?」「ステンドグラスって教会じゃん」っていうのを自分自身も含めてこの固定概念を壊したくて。それによって新しい発想が出てくる。

宮藤:25代住職になったのが15年前で、革命をやり続けているわけですね。

酒井:そうですね。私はお寺の息子ではなくて、一般からお坊さんになったんですね。その前は、普通のサラリーマンで食料品の営業をしていました。高校時代は水産高校で、マグロ漁船に乗ったりとか。

宮藤:えっ、漁師になろうと思ったんですか?

酒井:そうですね。3か月くらいマグロ漁船に乗りまして、ただちょっと船に弱く…船酔いですね。「ちょっとこれはダメかな」と思って諦めました。

宮藤:その後サラリーマンをされてから、出家したんですか。すごいな。

酒井:サラリーマン時代も、変な話、これだけよく喋るので営業成績はよかったんですね。だけどやっぱり、上には上がいるっていうことがよくわかって、挫折してしまって。氷の滑り台を落ちる感じですかね。掴まっても掴まっても落ちていっちゃうという。

宮藤:日々がですか?

酒井:はい、氷の滑り台みたいに。もうどん底まで落ちる前になんとかしなきゃいけないと思って、たまたま私の母方がお寺関係でしたので、そこで出家したということです。

宮藤:そんなきっかけが。

酒井:右往左往しながら出家して、「結構私に合っているんだな」「仏教という世界が合っているな」と思うようになりまして、ここまで継続できたのではないかと思っています。

宮藤:プロフィールを拝見すると、心理学や気功、ヨガ、瞑想などの専門知識と技術を習得。そして、アメリカでも「禅」を伝えているんですか!

酒井:そうですね。結局、妙乗院もある程度発展しまして、居心地が良くなってしまったんですね。居心地が良くなると人間は守りに入ってしまう。無意識に冒険をしなくなってしまうというのは、周りの人たちを見ていても思ったので、自分自身がまた違う「アウェイ」の場所に行って、どれだけ通用するかを試してみたかったっていうのもあります。それと同時に、世界の恵まれない子どもたちのために何か尽くせたらいいなと思って。今まで「お寺」は檀家さんっていって高齢者が多かったので。

宮藤:そういうイメージですね。ちなみにアメリカだと、どういう反応になるんですか?

酒井:アメリカだと、もうストレス社会が始まっているんですね。実は日本よりも。日本人は、ご存じのように昔からストレス社会なんですよ。村社会で。だからそれに結構慣れている。

宮藤:ストレス慣れしている。

酒井:はい。だから、私は世界の中で一番日本人がストレスに強いと思っています。我慢強いんですよ。

宮藤:そうですね。現在のコロナ禍の様子を見ていてもそうですよね。

酒井:アメリカ人は我慢弱いと思います。だから、日本人だったらこのくらい耐えられるってことが耐えられないんですよ。

宮藤:そういうことなんだ。

酒井:で、ITが入ってきてもっともっと貧困の差も激しくなって、ストレス社会に。

宮藤:そこに「禅」とか「仏教の教え」っていうのは、どう響くんですか?

酒井:アメリカでも「マインドフルネス」が流行りましたよね。ヨガもそうです、ストレスによってヨガが流行る。

宮藤:「ストレスがたまっている」ってことにも気づかないくらいもう。

酒井:そう。ストレスがよくわからないんですよ。

宮藤:そうか。ストレスをためないんだ。彼らは出してるんだ。

酒井:出してきたから。それで、「たまる」というのがよくわからなかったんですよ。日本人は村社会的な島国であって、長に逆らうとマズい問題が出てくるので。

宮藤:そういうしがらみで生きてきてますもんね。

酒井:アメリカ人はそうじゃないので、そういうことを教えながらどうストレスをためないでうまくバイタリティに変えて、向上していくかっていうお話を。そのためには、「マインドフルネス」「禅」をやって、心を落ち着かせて自分をコントロールするっていうお話をさせていただいているんですね。

宮藤:じゃあ、響くんですね。新鮮で。

酒井:ちょうど今チャンスなんですよ。実は。それもわかってて行ったんですけどね。

宮藤:そんな酒井さんが、住職をされている中で感じていることを教えていただけますでしょうか。

酒井:宮藤さんに言ってもしょうがないんですけど、ちょうど今の時代に合わせた「新しい感覚の寺」を作っているんですね。私、実は50歳から英語を習い始めまして。で、8年で講演会ができるまでにもっていったんですよ。

宮藤:講演会を英語で?すごい。できちゃうんですね。

酒井:歳を取ってもやれるんですよ。お坊さんってお経を覚えますよね。だいたい10分~20分ぐらいは、ほとんどの方が覚えているんですね。その倍か3倍ぐらい覚えるだけなんで、やれるんじゃないかと。

宮藤:お経を覚える感覚。

酒井:そうそう。あと年齢ですね。「50歳からやれるのかな?」と思って、自分で実験してみたんですよね。だから、やる気があればできるってことです。

宮藤:いや、すごいな。

酒井:それで、この「新しい感覚の寺づくり」もそうなんですけど、やっぱりお寺っていうとどうしても高齢者が多いですよね。

宮藤:そうですよね。

酒井:高齢の人もいいんですけど、若い人も来てもらうといろんな年齢層によってエネルギーが動き始めますので。若い人が来ることによって、発展、活気も出てくる。「どうしたら若い人に来てもらえるのかな」と思って、いろんなツールを作りました。目指すところは1つなんですけど、「滝行」や「座禅」、「写経」があったり、お話があったり、ステンドグラスにハマっていったりとか。キラキラしたものもたくさん置いたんですね。パワーストーンとか。

宮藤:へえ。

酒井:ツールだけはたくさん作っておいて、何がきっかけになるのか。

宮藤:今までのイメージじゃないってことですよね。我々がなんとなく「あ、お寺か」って思っちゃう感じ。

酒井:そうそう。歳をとってくると「お寺もいいかな」と思うんでしょうけど、どちらかというと神社のほうへ興味が先に…。やっぱり商売繁盛とか、あっちのほうに行かれる方が多いんです。お寺ってどうしても「死」のイメージと。

宮藤:それもありますね。

酒井:それも固定概念を崩すために、いろんな形で工夫しております。

宮藤:先程、動画も見せていただいたんですが、「滝行」って、敷地の中に滝を作ったってことなんですね。

酒井:そうですね。これも田舎なので結構批判も出たんですよ。

宮藤:唐突ではありますもんね。

酒井:そう、唐突。いきなり、たけし城があるようなものです!

宮藤:ですよね。テーマパークっぽい。

酒井:これは、私が本当に地道に稼いだお金で作ったんです。檀家さんのお金を使わずに。

宮藤:それは確かに、そうでしょう(笑)

酒井:そうじゃないと作れないです(笑)説明してもたぶん理解できないから。

宮藤:ビックリしますよね。

酒井:なるべく自然の石を使って、水は地下水なんです。水道水じゃなくて。だから、自然は自然なんです。私が滝行をやった時に、30秒ぐらいでスカッとリセットができるっていうのは、たぶん滝行しかなかったんですよ。

宮藤:へえ。

酒井:例えばカラオケをやったり、マラソンやったり。マラソンとか42.195kmも走らなきゃいけないから時間かかるじゃないですか。山登りもそうだし。その感覚を得られるんですよ、30秒で。

宮藤:「ランナーズ・ハイ」ならぬ「滝行・ハイ」みたいな?

酒井:達成感。血流がぐわーっと活性化していくので。それで、現代社会に合っているのかなと思って。やってみると自分で感じることができるので。

宮藤:1回いくらとか?

酒井:1回3,500円で。

宮藤:値段決まってるんですね。

酒井:はい、今の若い人には「お気持ち」だとわかりにくいので。「気持ちだったらタダでもいいのかな」とか、「気持ちだったら5円でもいいのかな」とか、「気持ち」というのがわかりにくいと思うので、値段を設定させてもらって。だから、実は東京からも来るんですね。東京からのお客さんが結構多いんです。

宮藤:「滝に行かなきゃいけない」って思うのと「このお寺行ったら滝がついてるんだ」っていう感じだとね。面白いですよね。

酒井:「面白いから1回行ってみようかな」って、気軽に来れるように設定はさせていただいてました。最初から「滝行」って言うと、重たい感じがしたんですよね。「悩みがあったんじゃないか」「フラれたんじゃない?」とか、そんな感じで「何かあったの?」って言われるから、それをちょっと打破したくて。一般の人たちが来てもらえるように、イメージをちょっと変えたんですね。

宮藤:だいたい不祥事を起こした芸能人とかがね。そういうイメージですよね。

酒井:そうですね。それで芸能人の人たちも、八王子のあっちのほうへ行って滝行をやったりとかね。たまにうちも来るんですよ。あ、『タモリ倶楽部』さんも来ました。

宮藤:『タモリ倶楽部』ですか!へえ。

酒井:ちょっと面白おかしくするためにうちに来たんですけどね(笑)『タモリ倶楽部』の方は、「シティ滝行」って名付けてもらって。

宮藤:シティ?

酒井:「街」の「シティ」ですね。「街の中に滝行がある」って言って。

宮藤:みうらじゅんさんかな?(笑)

酒井:結構サラリーマンとか、OLさんとか、学生とかが来るようになったんですよ。普段だったら来ないような人たちがお寺に足を運ぶようになりました。

宮藤:さすが、いろんな改革のおかげですね。

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