ビジネスシーンでイノベーションを起こしている経営者たちと、
クリエイティブの世界でイノベーションを起こしてきた宮藤官九郎との異業種対談企画。

今回のゲスト

笹井克太朗
マイスターズグリット株式会社 代表取締役

笹井克太朗SASAI KOTARO

1998年 広島広陵高校卒業 
2000年 有限会社オールデザイン黛 入社 営業
2006年 ロイヤルジャパン株式会社 入社 総務・事務
2014年 株式会社エムズシステムズ 入社 営業・管理
2019年 マイスターズグリット株式会社 設立 代表

2021年7月23日(金)

ゲスト笹井克太朗

TBSラジオで放送中の「宮藤さんに言ってもしょうがないんですけど」。パーソナリティは、宮藤官九郎さん。

日本の経済を動かす経営者や団体の代表の方に、哲学や考えを聞きながら、知られざる業界の実情に迫っていく「Innovative Lounge」。

お迎えしたのは、マイスターズグリット株式会社 代表取締役 笹井克太朗さんです。

宮藤:会社のことを伺っていく前に、事前アンケートに「趣味:ギター」と書かれていて、会社のHPにある笹井さんのプロフィールには「25歳までギター修行をしていた」と書いてありましたが、もともとミュージシャンだったんですか?

笹井:ミュージシャン志望で。高校出て、就職もせずにずっと路上で弾いたり歌ったり。

宮藤:あららら。就職しなかったんですか?

笹井:しなかったんです。みんな「どこどこの大学に行く」って書いてたんですけど、僕だけ「ギター修行」って書いてあって。

宮藤:25歳まで働いてなかったってことですか?

笹井:時々新聞配達したり、スポットでバイトしたりとか。家も、最後のほうはなくなって、路上で寝たりとかしてましたね。

宮藤:それは、夢が諦めきれなかった?

笹井:諦めきれないのもあったし、何もできないっていうか。自信もなく。

宮藤:そこから会社を立ち上げるのは、どういう経緯でですか?

笹井:流れ流れ着いて今の塗装業になったんですけど、いろんな仕事をいっぱいしながら、友人が「会社やる」っていう時にものづくりの塗装の世界に入って、そこからですね。

宮藤:それで、自分で会社を立ち上げるまでいくわけですよね。

笹井:そうですね。結局、その誘ってくれた友人の会社も3年前くらいになくなって。今、マイスターズグリットは3年目なんですけど、当時の仲間とか技術者とかお客さんがバラバラになってしまうのももったいないと。で、技術もあるので「もう1回みんなでやりたい」というニーズも受けて、「じゃ、やろうぜ」と。

宮藤:へぇ~。

笹井:たまたま営業だったのでお客さんも全部ついてきてくれて。「なくなったら困るし」っていうところで。ただ役割で代表になったみたいな。

宮藤:いやでもすごいですよ。改めて、マイスターズグリット株式会社の詳しい事業内容を教えていただけますか?

笹井:塗装なんですが、主に工業製品の、例えば化粧品のパッケージとか、自動車部品、カメラの部品とか、小さいもの。ガラスもですね。あとは、舞台の衣装も塗るんですけど。

宮藤:えっ。塗る?塗装ですか?

笹井:塗装ですね。剥がれたり割れたり伸びたりとか、機能性がすごく大事なので。光を遮断するとか。で、その塗料も開発したり。

宮藤:塗装用の塗料を?

笹井:はい。材料も開発して、プラスそれを量産する機械も作って、それで全部販売もするという。開発とか技術メインの会社ではありますね。

宮藤:「塗装を施す」っていう仕事と、「その塗料を作る」っていう仕事と、「塗装するための道具を作る」ってことですか。

笹井:はい。

宮藤:本当に、塗装に関わること全部ですね。

笹井:塗装でこんな会社ないんじゃないかっていう(笑)

宮藤:そうですね。中でも、今は環境対策事業に積極的に取り組んでいるということで。具体的にどんな活動をされているんですか?

笹井:塗装って、有機溶剤とかシンナーのニオイがあって、都内で今のチームで10年近く前に始めた時に、近隣住民から「くさい」と。

宮藤:あぁ、苦情が。

笹井:苦情がすごい。けど、我々その時には塗ることしかできなかったので。「それでもなんとかやりたい」ってことで、「そのニオイを消す装置を作ろうぜ」っていうところから、いろんな技術を開発して。で、その「ニオイをカットできる塗装」から、今、「農業や養豚場のニオイを処理してください」っていうところまで広がっていて。

宮藤:なるほど、なるほど。その塗料のニオイを消すものを作ったら、他のニオイも消せるようになったと。

笹井:成り行きですね(笑)

宮藤:やっぱり目の付けどころが違うというか、「苦情が来た」っていうところから「苦情が来たからそれを解決する」で終わらせずに、他の仕事まで結びつけているっていうのがすごいですよね。

笹井:そうですね。ピンチがチャンスに変わる。見方を変えればっていうところで。それで今、環境問題に取り組んでいますね。

宮藤:そうなんだ。塗装をされている笹井さんだからこそ気が付く環境問題というか、「今、問題だな」って思うことはありますか?

笹井:やっぱり塗装の「塗料」が有機溶剤が含まれていて、大気汚染物質などを排出していたんですが、それを含まない無溶剤も開発していて。そういった、塗料自体、素材自体で、環境に優しいものを作っていく。そして、機械もなるべく電気代を使わない、CO2排出にも配慮を…という点に、塗装業だから気付けたんです。でも、機械っていろんな機械があるので、そこにも応用がききますよね。

宮藤:なるほど。そんな笹井さんが会社を経営される上で、大変だと感じていることがあれば教えていただけますでしょうか。

笹井:宮藤さんに言ってもしょうがないんですけど、下請け加工として、やっぱり単価などで苦労があるんです。

宮藤:安いってことですか。依頼主から「これぐらいでできるよね?」と言われて。

笹井:そうなんですね。そこで技術に対しての対価が、本当に伝わらないというか。

宮藤:うーん。まあ、そうですよね。

笹井:だから、高付加価値と高単価で今は。逆に言ったら、それを納得させるまでもっともっと技術を高めていこうっていう気概ではあります。なかなか認めてもらえないのでちょっと…愚痴ですね(笑)

宮藤:「これぐらいの金額の機械とか機材とか塗料とかが必要だ」っていうのは目に見えてわかるけど、その働いている人の「技術」ですよね。そこはやっぱり、頼む側は「ちょっとでも良い仕事を安くやってもらいたい」っていうのが基本ですもんね。

笹井:そうですね。それはお応えしたいんですけど、ちょっとそれでも、「うーん」っていうところもありますね。

宮藤:そうですね。会社のHPにも『マイスターズグリット株式会社は、挑戦し続ける塗装屋』と書いてあるそうですが、今はどんなことに挑戦されているんですか?

笹井:先程の話にも繋がるんですけど、やっぱり元請けのところにおんぶにだっこじゃなくて、自分らの自社製品なり、自分らでちゃんとやっていける会社づくりを。僕、町工場とベンチャーってなかなか珍しい立場ではあるんですけど、「自分の会社で技術を守ろう」じゃなくて、「技術使ってもらって、みんなで良くしていこう」っていう。

宮藤:ああ。業界全体の?

笹井:業界自体を、ものづくり自体をっていうそういうベクトルに。「自分が生き残る」ってことではなくて、「周りが良くなったら自分も生き残るじゃん」っていうところの挑戦をしたいっていうのはずっと思っていますね。

宮藤:「目の前のことだけ良ければいい」ってわけじゃないですもんね。先々までありますもんね。

笹井:そうですね。うちの会社では大量生産ができないので、目の前見てても、そこばかりやっても「ねえ、なんとかしてよ」じゃなくて、「自分らでなんとかしなきゃ」と。

宮藤:なるほど。下請けならではの苦労ですけど、頼まれることだけやってたら先がないですもんね。

笹井:だから自立できるようなところをみんなでやっていく。僕らみたいな方がいっぱい下町から来てるんですけど(笑)町工場なのでわーっとみんな。いい技術をみんな持ってるので、出し合ってやっていこうぜっていう。

宮藤:素敵な考え方ですね。是非、みなさんを引っ張っていって下さい!

笹井:ありがとうございます。

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