ビジネスシーンでイノベーションを起こしている経営者たちと、
クリエイティブの世界でイノベーションを起こしてきた宮藤官九郎との異業種対談企画。

今回のゲスト

澤木昇
株式会社メンテル 代表取締役社長

澤木昇SAWAKI NOBORU

18~21歳 水道配管を中心に現場の職人として働く
21~23歳 水回り商品大手企業の修理・クレーム処理をするカスタマーエンジニア職
28歳 株式会社メンテル 創業

2021年7月23日(金)

ゲスト澤木昇

TBSラジオで放送中の「宮藤さんに言ってもしょうがないんですけど」。パーソナリティは、宮藤官九郎さん。

日本の経済を動かす経営者や団体の代表の方に、哲学や考えを聞きながら、知られざる業界の実情に迫っていく「Innovative Lounge」。

お迎えしたのは、株式会社メンテル 代表取締役 社長 澤木昇さんです。

宮藤:株式会社メンテルさんは、どんなことをやっている会社なんでしょうか?

澤木:建物の配管設備や水廻りの機器の取り換えといったものから、ユニットバスやキッチンの設置とそれに伴う内装工事ですね。最近だと屋根など、いわゆる住宅のリフォーム=修繕関係のこともやっています。

宮藤:澤木さんの経歴を拝見したところ、18歳~28歳までは職人として働いていたんですか?

澤木:そうですね。実際に現場に行って。

宮藤:今の会社を始められたのはいつ頃ですか?

澤木:27~28歳頃から「メンテル」という屋号でやり始めて。それで、次の年に法人にしました。

宮藤:その修行していたところは、今に繋がる内容だったんですか?

澤木:そうですね。一番初めは、水道配管を中心にやっているいわゆる「町の水道屋さん」みたいなところで。次に水回り関係の大手企業のカスタマーエンジニアをやっていました。

宮藤:カスタマーエンジニアとは?

澤木:お客さんからの連絡を受けて、修理をする職種です。あと、内装工事の方は、大阪に修行に行ってスタートしたような感じで。

宮藤:事前アンケートに、「全国の下から2番目の売上から、全国トップまで経験した」とありますが、何の売上ですか?

澤木:これはカスタマーエンジニアをしていた時のものです。毎月全国で売上の成績が出るんですよね。それが、ドベ2だった頃があって。初めの頃なんですけど。で、やっぱり「これじゃダメだな」と、どうしたら売上を伸ばせるのかを試行錯誤しながらやっていました。

宮藤:なるほど。そもそも10代の時にこの仕事を始めたきっかけは?

澤木:僕は普通の工業高校に行ってたんですけど、2年の時に辞めて通信の学校に行ってたんですね。その時にいわゆるできちゃった結婚で。

宮藤:うわー。ああ。

澤木:「これはもう働かんとまずいな」と。

宮藤:何より先に「父親」じゃないですか。

澤木:そうなんです。なので、卒業式の前に結婚式みたいな感じで。

宮藤:とにかく社会に出なきゃいけなかったんだ。

澤木:そうです。そうするとやっぱり、普通に働いていてもらえる給料って決まってるというか。5年後にもらえるお給料は、その会社に5年前に入った人と変わらないじゃないですか。普通の働き方をしていると。だから「独立するしかねえ」みたいな感じで。最初の水道屋さんも僕の中学校の同級生の実家なんですけど、そこに「独立したいので雇ってください」と。

宮藤:最初から独立して経営者になるという思いがあったんですか。

澤木:経営者になるというか、「とにかく独立、とにかく独立」でしたね。

宮藤:今、お子さんはおいくつですか?

澤木:長男は8月で18歳です。

宮藤:澤木さんはおいくつですか?

澤木:僕は36歳です。

宮藤:うわー!!人生いろんなことが。36歳といったら、僕は子どもが生まれた歳ですから。そうですか。それで、28歳で経営者になって経営する中で「社員は自分のような心意気で仕事をとらえていないため、温度差や方向性の違いを感じる」と。ちょっと変わってますもんね(笑)

澤木:あっ、変わってます?(笑)

宮藤:スタートが「とにかくやらなきゃ」「独り立ちしなきゃ」っていう、切迫感が違いますもんね。

澤木:そうなんですよ。独立するから親方がやることを横目でチラチラ見たり、施工説明書をゴミ箱からあさって見て勉強していかないと!っていうのがあって。18歳で初めに入った時の給与が8万円しかなくて。

宮藤:えっ。初任給?それは大変でしたね。

澤木:もう親戚中から「辞めろ」「辞めろ」言われて。奥さんからも、忘れもしないのが、「時給いくらよ?計算したことある?」と。

宮藤:やだもう(笑)

澤木:それでも、その時に自分の市場価値っていったらあれですけど、自分ができないからしょうがないじゃないですか。

宮藤:まあ…、そうですね。

澤木:だからその時に「こんちくしょう」って思って、「できるようにならんといけない」って目が覚めたんです。

宮藤:すごいですね。それで全国トップまで。

宮藤:そして、経営の苦労についてですが、「下請けになるか、元請けになるかの選択がある」とアンケートに書いていただきましたね。

澤木:「下請け」は、工事の中でもいろんな作業があるんです。例えば、トイレの改装で「便器を付けるだけ」であったりとか、「内装まで考えて内装も工事する」とか。「元請け」となると、工事を安全に進めていくための計画が必要であったり、あとは建築基準法という法律があるので、その辺の判断も全部自分でやっていくんです。なので、単純に交換をする工事をする前に、いろいろなことがあるという。

宮藤:下請けでいっぱい数をこなしたほうが利益にはなるけど、いろいろなことが経験できるのは元請けということですかね。

澤木:そうですね。どっちも経験と言えば経験なので、どっちがいいとか悪いとかではないと思うんですけど、自分の立場で「成長していきたい」って思った時に、下請けの工事だけやっていると成長にあまり繋がらないというか、学びが少ないですね。

宮藤:なるほど。それでは、澤木さんが感じている「業界のここを変えたい!」と思うことを教えていただけますでしょうか。

澤木:宮藤さんに言ってもしょうがないんですけど、職人の価値を向上させたいですね。

宮藤:価値。今「低いな」って思うことがあるということですか?

澤木:「職人単価がいくら」っていうのが建築業界の中ではあるんですが、「一律じゃないんじゃないかな…」っていうのは当然ありまして。

宮藤:そうですよね。

澤木:どれだけ難しい案件だったとしても、一律のだいたいの予算感ってどこの業界でもあると思うんですけど、そこにあてはめられてしまって。かつ、市場が、やり手がたくさんいる業界なので、僕らが「その金額じゃできない」って言ったら、他の業者に仕事が回ってしまう。なので、難しいところはあるんですけど。

宮藤:なるほど。我々はなかなか、工事してくれている職人さんの質や価値まで目がいかないですもんね。安く良い仕事をしてもらえたら、それにこしたことはないって思ってしまって、それが限界ですよね。客側は、あまり知らされていないというか、知りたいけれど、なかなかそういうことを発信する場もないですもんね。

澤木:そうですね。職人のモチベーションを上げて、ますます技術を磨いていくためにも、その評価方法とか、環境を作っていくことが大事だと思っています。

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