ビジネスシーンでイノベーションを起こしている経営者たちと、
クリエイティブの世界でイノベーションを起こしてきた宮藤官九郎との異業種対談企画。

今回のゲスト

竹林良太TAKEBAYASHI RYOTA
神奈川県川崎市生まれ。中学校まで地元で過ごし、高校よりオーストラリアに留学。
クラシック音楽をメインとした高校生活をシドニーで過ごし、子供の頃から舞台に立つ側ではなく、舞台裏の仕事に興味を持っていた事から、高校卒業後は本格的に舞台演出の道へ進む。
2003 年 オーストラリア、Charles Sturt University, Bachelor of Art (Design forTheater and TV) に入学。
シェイクスピアを中心とした舞台演出や映画製作のセット、ライティング、サウンドデザインと技術を学ぶ。
帰国後、映画や CM 撮影業界を転々としながら、カメラから見たフィクションではなく、リアルでフェイクが難しい空間演出に強く憧れるようになる。
2007-2012年 展示会のブースデザインをメインとする株式会社アートアイデアにて活動。
2012 年 株式会社リオエンターテイメントデザインを設立。
ゲスト竹林良太
TBSラジオで放送中の「宮藤さんに言ってもしょうがないんですけど」。パーソナリティは、宮藤官九郎さん。
日本の経済を動かす経営者や団体の代表の方に、哲学や考えを聞きながら、知られざる業界の実情に迫っていく「Innovative Lounge」。
お迎えしたのは、株式会社リオエンターテイメントデザイン 代表取締役 竹林良太さんです。

宮藤:リオエンターテイメントデザインさんは、どんなことをやっている会社なんでしょうか?
竹林:店舗や展示会ブースといった空間のある場所のデザインを手がけたり、イベント企画・運営をメインに行なっている会社です。
宮藤:展示会って、晴海とかでやってるような?
竹林:そうです。ビッグサイトとか幕張メッセとか。
宮藤:僕、20歳くらいの時にそういうところでバイトしてました。叩いて壊して、叩いて壊して。
竹林:そうなんですか(笑)じゃあなんとなく分かりますね。
宮藤:事前のアンケートを拝見すると、コロナ禍で仕事の考え方に変化があったと。やっぱり大変ですよね。
竹林:今、本当にパラダイムシフトが起きていると思っているんですけど。世界って何回も何回もこのパラダイムシフトを起こしていて。例えばスイスは、ゼンマイ式の時計メーカーで、大体世界で9割くらいのシェアを誇ってたんですね。それがデジタル化された時に職人さんたちが、ふざけんな、デジタルなんてあり得ないって言って、そこで成功したのが日本のセイコーっていう会社なんですけど。なので、いろんな業界がその都度その都度、それまで常識だったことが非常識になるタイミングを繰り返してると思うんです。
宮藤:なるほどね。
竹林:このデザイン業界も、今までは例えば、グラフィックデザイナーは、ポスターやチラシを作る。僕みたいな空間デザイナーは、ブースを作る。それを決めてるのって、どっちかと言うとクライアントよりも自分たちのような気がしてきて。
宮藤:あ〜。
竹林:今、プラットフォームっていっぱいあるじゃないですか。売り方もサブスクがやれるし、ホームページで売れるし、僕もYouTubeやってるんですけど、YouTubeで告知してもいいし。いろんなことが出来るから、自分で垣根を決めるんじゃなくて、それを乗り越えていく。もっとクライアントの製品に寄り添ったことを考えていかないと、これからは仕事って減っていっちゃうんじゃないかなと思っています。
宮藤:今までやってきた自分の仕事の範囲を超えたものをやっていくと。
竹林:そうですね。逆に面白いと思うんですよ。2Dから入っている人が3Dを作ったり、3Dの人が2Dを作ったら。宮藤さんもそうですけど、いろんなことをされてるじゃないですか。
宮藤:はいはい。
竹林:俳優やられたりとか、監督やられたりとか。そういうバイタリティのあることをしていかないといけないのかなと。
宮藤:なるほどね。そうすると他の業界行った時に軽く冷たくされますけどね。
竹林:(笑)
宮藤:「お前こっち来んなよ〜」みたいなのもありますけどね(笑)気をつけないと。
竹林:気をつけながらですけどね(笑)
宮藤:仲良く仲良く、垣根を超えていければ。
竹林:いいですよね。
宮藤:もともと空間デザイナーをやってらっしゃったんですか?
竹林:最初はそうなんです。でもオリンピック問題もあって展示会場が使えなくなるという危機感も持っていたので、もっとイベントとかを運営・企画するほうもやっていかないとと。コロナなんて想定してなかったんですけど、5年前くらいから企画のほうに力を入れて、なんとか今、飯が食えている状態ではあるんですけどね。
宮藤:大変ですよね。オリンピックやるからって言って一回変えたものが、コロナでもう一回チャラになってるわけですもんね。
竹林:そうなんですよね。また今年やるとなったら、会場もまた押さえられちゃいますから。他で対策を打っていかないとキツい状況ではありますよね。
宮藤:フェスだって、オリンピックがあるからって言ってズラしたのに、それもコロナで結局ダメになりましたしね。やれたじゃんって話ですもんね。
竹林:そうなんですよ。

宮藤:それでは、竹林さんが、「業界のここを変えたい!」と感じることを教えて下さい!
竹林:宮藤さんに言ってもしょうがないんですけど、日本は海外に比べると、イベントデザインに対する考え方、仕事が軽視されがちなんじゃないかと。
宮藤:軽く見られると?
竹林:そうなんですよ。例えば、展示会はもともと祭り事で。いっぱい予算をかけて、半導体がすごく開発されたときとか、液晶画面になったときとか、スマートフォンが出来たときは、もう、どのブースもかっこよかったんですよね。ですが、段々段々、そういった大きなファクトがなくなって、経済もこれだけ落ちてますし、そうなってくると予算を抑えて抑えて…になってしまう。その時に、デザインがどれだけの力を持っているのかというと、一番軽視されがちな部分なんです。目に見えないので。
で、我々業界人が業界の中で、それでも仕事が欲しいので「タダでコンペに出ます」「ここの予算を抑えて提案します」と言ってしまうと、結局、仲間同士で殺し合っていることになる。
例えば、僕らのようなデザインの会社が5社、コンペに参加して、コンペのためにデザイナーに10万円で依頼したとして。
最終的にその仕事を頂けても、受注額が50万円だったら…。そのために5社が10万円かけたので、業界全体でみると既に50万円かかっている。最終的には、業界としてマイナスになってませんか?と。現状として、こういうことが起きています。
やっぱりそこはプライドを持って、「オンリーワンを作っているんだから、これくらいの金額は頂きたいですよ」と、我々業界人の中でもやっていかないといけないのかなと思うんですけどね。
宮藤:請求するのって難しいですもんね。
竹林:そうです。プロダクトがあって、これを1000円で売って、100個あるからこれだけの利益を作りましょうっていうのは簡単なんですよ。目に見えるものだから。でも一個一個違うデザインをして、デザインが終わらないとちゃんとしたものが出来上がらない、成果物としてないとなると。やっぱりお客さんにとっては不安はあると思うんですけどね。
宮藤:展示ブースって、商品をかっこよく見せるためのものですもんね。
竹林:そうなんですよ。展示ブースがかっこいいんじゃなくて、その製品をかっこよく見せないといけないのが展示ブースなので。だから立つまで分からないというか。
宮藤:そこにお金をかけるか、かけないかということですよね。
竹林:そうなんです。
宮藤:私がバイトしてた頃はバブルだったんですね(笑)
竹林:結構、楽しかったと思うんですけどね(笑)
宮藤:短時間で、すごいいいお金を貰ってたからな…。関係ない話ですみません(笑)だからオンリーワンがキーってことですね。いかにオンリーワンを作るかってことだ。
竹林:そうですね。
宮藤:オンリーワンを作ってくれるって信用が、次の仕事を生むわけですもんね。あとは経営の苦労っていうのはどんなものがありますか?
竹林:会社を始めて9年くらいになりますが、会社の規模が大きくなると、依頼される仕事の量も変わったり、求められるクオリティも上がってきます。人間ってどんなにカリスマでも天才でも、24時間っていう時間を超えられた人って一人もいないじゃないですか。
宮藤:いないですね!
竹林:25時間持ってるぜ!っていう人はいないんですよ。そこが人間の一番のリミットだと思っていて。だけどスタッフを大事にすることで、自分の時間をスタッフと共有すれば48時間まで使える感覚になる。もっと仕事が出来るんじゃないかとか、もっと考え抜けるんじゃないかと。
なので、120%努力してくれているスタッフをいかに気持ち良く仕事させるか。その空間とか環境を整えたり、それこそそれをデザインすることが、経営者として僕が1番大切にしないといけないこと。人間を扱っているので1番大変なことでもありますけどね。
宮藤:そうですよね。身体を壊したり、心を壊したりしちゃったら何の意味もないですもんね。
竹林:社員が「おはようございます」って言うそのトーンで、こいつ今ちょっと悩んでるなとか、ちょっとここでフォロー入れようかなとか、小さな変化ですけど。心の病もそうですが、何か心に詰まってると、そういうのが頭にずっといて。ちゃんとしたデザインが出来なくなっちゃうんですよ。身も心も豊かで気持ちいい状態じゃないと、やっぱりいいものは生み出せないから。
宮藤:いい経営者ですね。
竹林:ありがとうございます(笑)
