ビジネスシーンでイノベーションを起こしている経営者たちと、
クリエイティブの世界でイノベーションを起こしてきた宮藤官九郎との異業種対談企画。

今回のゲスト

湯川宗之助YUKAWA SOUNOSUKE
1975年生まれ、東京都出身。
高校生の時、祖父の病をきっかけに医師を志す。
2000年東京医科大学医学部医学科卒業後、 東京医科大学病院第三内科、産業医科大学医学部第一内科学講座を経て、15年湯川リウマチ内科クリニックを開院。
16年一般社団法人リウマチ医療・地域ネットワーク協会を設立。
リウマチの正しい理解を促す啓蒙活動を精力的に行う。
ゲスト湯川宗之助
TBSラジオで放送中の「宮藤さんに言ってもしょうがないんですけど」。パーソナリティは、宮藤官九郎さん。
日本の経済を動かす経営者や団体の代表の方に、哲学や考えを聞きながら、知られざる業界の実情に迫っていく「Innovative Lounge」。
お迎えしたのは、武蔵境駅の近くにある湯川リウマチ内科クリニック院長で、一般社団法人リウマチ医療・地域ネットワーク協会 代表理事の湯川宗之助さんです。

宮藤:高校生のときにお医者さんになろうとしたそうですが、きっかけは何だったんですか?
湯川:高校の入学式の翌日に、祖父が亡くなりました。私はおじいちゃん子でしたので、もし自分が医者だったら治せたのではないか…と。小学校・中学校でずっとサッカーをやってきて、高校でもやろうと思っていたのですが、そのサッカーをやめて、勉強することを決意しました。残されたおばあちゃんは自分が看ようとも思っていました。
宮藤:では、リウマチの専門医になったのは、なぜですか?
湯川:研修医のときに、20代の女性がリウマチのために変形した手で、ハンドバッグからお財布を取り出したりしているのを見たのです。当時リウマチは不治の病。かかったら一生治らないと言われていたので、その一助になれるような活動ができないかと思い、リウマチ・膠原病の道に進もうと思いました。
宮藤:リウマチは、歳をとった人の病気だというイメージがあるんですけど、若い人が多いんですね。
湯川:30~50歳代の女性に多いですね。4倍多く発症することがわかっています。
宮藤:そうなんですね。それは初めて知りました。では早速ですが、湯川さんが世の中に訴えたいことを教えて下さい。
湯川:宮藤さんに言ってもしょうがないんですけど、リウマチはまだまだ正しい理解がされていないんです。
宮藤:今、僕も1つ誤解が解消されました。湯川さんは、先月『リウマチは治せる』という本を出版されていたり、とにかく、リウマチの正しい理解を促す活動されているということですね。
実は僕の知り合いで、20代後半とか30代前半くらいの頃にリウマチになった女性がいたんです。ずっと現場が一緒だった人で、最初は大変だ大変だ!と言っていたんですが、ある時、少しずつ良くなって、最終的に症状出なくなったみたいなんです。その人と出会うまで、リウマチは治らないと思っていたんですけど、そんなことないんですね。
湯川:はい、そんなことはありません。
宮藤:そもそも、リウマチはどういう病気かを教えてもらって良いですか。
湯川:リウマチは自己免疫疾患の中の1つ。膠原病の中の1つの疾患です。免疫異常が病気の本態で、自分で自分を攻撃してしまう。関節リウマチは関節の滑膜というところの免疫異常で炎症が起こってしまいことで、こわばり、腫れて、痛む。さらに進行してしまうと、関節が破壊・変形されてしまいます。かつては、10年後に50%の方がベッド上に…となっていた病気でした。
宮藤:自分の体を、自分の中の何かが破壊していく病気なんですね。
湯川:しかし、今は治る病気になっています。
宮藤:どういう治療で治るんですか?
湯川:厳密に言うと「寛解」となるための治療で、薬物療法が主なんですが、内服薬があったり、点滴の治療があったり、皮下注射の治療があったりします。その方に合う治療で「寛解」という、痛くないし、腫れないし、こわばらないし、関節が破壊・変形しない根本治療があります。
宮藤:寛解っていうのは、全治ではないけど、治まると。
湯川:はい。薬を使っていて何ともなくなるのが寛解。その先に、薬を減らして止めても寛解を維持できるのが完治。完治の可能性がある病気です。

宮藤:誤解があるというのは、どういった点ですか?
湯川:リウマチというと、だいたいが、おばあちゃんの温泉のイメージ。
宮藤:そうですよね。温泉の効能にリウマチって書いてあって。
湯川:そのイメージなんですが、実は、発症したのは30~50歳のとき。当時は有効な治療法がなかったので、みなさん関節が破壊・変形されてしまった。その古傷を癒しに、おばあちゃん方が温泉に行ったというのが実際のところです。
宮藤:確かにそうですね。おばあちゃんたちがリウマチになったのは、もっと前なんですね。あと、自分がリウマチかも…と気付くための知識も広がっていないということですが、早期発見のためにはどういう症状を気にしたら良いんですか?
湯川:初期症状は、朝の手のこわばり、関節が痛む・腫れる、ペットボトルが空けられない、リモコンを押そうとしてもうまく押せないとか。
これが典型的な初期症状なんですが、だるい・疲れやすいといった倦怠感、微熱や食欲低下、何となく気分がすぐれないとか、リウマチじゃなくても起こりうるものが初期症状の中に入り込んでいます。ご自身で疑っていただくことが大事です。
宮藤:誰にでもあるような症状なんですね。
正しく理解されないことで、どういう問題が起きているんですか?
湯川:薬物治療・内服治療・点滴・皮下注射の薬に出会えなかったり、あるいは、早期に見つけた方が、寛解の先の、完治の割合が高まることがわかっています。
「大丈夫大丈夫…」と遅れてしまうと、寛解・完治の割合が落ちてしまうので、社会的にも、あるいはその方の人生としても、必ず早期に発見というのが大事です。
そういったことが理解されなければ、医療機関の地域格差が問題になってしまいます。
宮藤:リウマチの専門医って、全国に結構いるんですか?
湯川:いえ、まだまだ少ないんです。先生を増やすことは僕にはできないので、僕ができることは、市民の方に、リウマチは今こうなっているので、きっちり治療すれば寛解が待っていますよ!ということを知っていただくこと。
宮藤:まずリウマチなのかも?と疑うことが大事ですよね。
湯川:その通りなんです。
判断を先生任せにしてしまうと、医師が少ない地域では、「先生が大丈夫って言ったから大丈夫なのかな」となってしまいます。そこをもう1段階「こういった症状があるし、私はリウマチじゃないですか?」と疑っていただけたら。
宮藤:各自がですね。
湯川:はい。そのために、僕は本も出しています。
宮藤:「リウマチは治せる」という本ですね。そういう問題を解決するために、湯川さんは、どういう活動をされているんですか?
湯川:当院には、全国から患者さんが来ています。治療で落ち着かれて寛解に到達した方は、地域の医療機関に返していっています。わざわざ遠方から当院に来なくても、地元で治療していただけることが一番ですから。そのような環境を整えるために、リウマチに関する啓発活動がメインですね。
宮藤:では最後に改めて、この記事を見ている人に、伝えたいことをお願いします。
湯川:リウマチは治せます。正しい知識をそれぞれの皆様が持っていただいて、早めにリウマチを疑う。リウマチ治療中の方は、寛解に到達していただけるように、先生と相談しながら治療していっていただければと思います。
宮藤:まだまだ知られていない病気ということですね。
